
塩尻市を拠点にトランポリンの普及・指導をする「TORAJAM(トラジャム)」(広丘高出)代表でスポーツトレーナーの百瀬圭さん(36、広丘野村)。幼児から大人までにトランポリンを指導する一方、長女・花ちゃん(2)の育児に積極的に関わるイクメンです。
都会同様の教育病乗り越え実現
★スポーツトレーナーになる
同市と松本市で小中高と硬式野球に打ち込んだ百瀬さん。中高では主将を務めますが、共に最後の大会で肩を負傷。周りからは良い投球フォームだと言われていたのに、大事な試合で二度も同じ場所を傷めたことに疑問を抱きます。
そんな時、テレビで知ったスポーツトレーナーの仕事に興味を持ち、卒業後は横浜リゾート&スポーツ専門学校(横浜市)へ。資格を取得し、2009年にスポーツインストラクターの派遣や体操教室の運営などを行うスポーツコミュニティ(同)に入社。子ども向けの運動教室でトランポリンや鉄棒などの器械体操、野球、陸上などの指導に携わります。
★「TORAJAM」設立
いずれは地元に戻るつもりだったため13年に退職してUターン。翌年塩尻市内のスポーツクラブに就職し、体操や水泳、シニアの運動教室のほか調理の指導などもします。
故郷に戻って気付いたのは、子どもたちがさまざまなスポーツに触れる機会が少ないことです。「都会と同じような教育を受けさせてあげたい。その一つとして『競技のトランポリン』を学べる場をつくりたい」という夢を抱きます。
19年に前の職場で同僚だった理沙さん(32)と結婚、翌年7月に花ちゃんが誕生します。喜びの一方で仕事は多忙を極め、朝から夜遅くまで働く中、うつ病に。子どもが2カ月の時でした。
1カ月休職して復帰しますが体調は思わしくありません。それでも幼い娘と妻を思い職場にとどまろうとしますが、理沙さんの「絶対にうまくいくから1人でやった方がいい」という言葉で決心がつき退職。アルバイトをしながら起業の準備を進め、今年4月に「TORAJAM」を立ち上げました。
娘抱えて仕事も家族の時間幸せ
★仕事と子育て
「トランポリンは、抗重力筋(重力に対抗して姿勢を保つために働く筋肉)のトレーニングとして効果的。教室では何より『安全と楽しむ』ことを大切にしています」
外部指導では、組み立てると直径4メートルになる大型トランポリンを車に積んで会場へ。「トランポリンは地面で踏ん張れない分、空中でのボディーバランスがかなり鍛えられます。ボディーバランスが向上すれば陸での動きはより簡単になり、どんな競技でもパフォーマンスを最大限に発揮できる。子どもから大人までどんどん跳んでほしいです」
共働きのため育児は2人で協力。理沙さんは自宅を仕事場にするため、時には百瀬さんが娘を抱っこしてパソコンに向かう時も。「家で事務仕事などをするときは切り替えが難しい。でも、家族と一緒に過ごせる時間があるのはうれしいです」
ある時、娘がご飯を食べないことが気になり、百瀬さんが思い付いて始めたのが胸の前で手を合わせて「いただきます!」と言うあいさつです。「今では集中して食べるようになりました。娘には、他人に流されず自分の感情を大事に生きてほしい。いつか3人で旅行に行きたいです」