チーズの風味?東京の発酵食品店で人気の〝みそ玉〟みそとは

原点と個性「生き残る道」

県内を代表する老舗みそ店の「萬年屋」(松本市城東2)と「小池糀(こうじ)店」(木曽町福島)。両店がみそ玉から造った伝統のみそが東京・下北沢(世田谷区)の「発酵デパートメント」で人気を広げている。
デパート代表は発酵食の良品と文化を求め、世界中を歩いている小倉ヒラクさん(39)。本の執筆やテレビ出演など各メディアで活躍する食品業界注目の人だ。
小倉さんは両店のみそを「チーズの風味を持つみその個性派。古来の食文化を継承する姿勢も素晴らしい」と絶賛。そんな高い評価に両店も「とても励みになる」と喜ぶ。
ただ、みそ玉造りは手間ひまかかるため、今では手がける店もごくわずか。それでもみそ玉にこだわるのはなぜか。普通のみそと何が違うのか。両店を取材した。

試食の味が受け「ファン拡大中」

「発酵デパートメント」は2020年4月の開店以来、みそやしょうゆ、漬物など、代表の小倉ヒラクさんが味と品質に納得し、作り手に共感した発酵食品を幅広く販売している。
数ある長野のみそから小倉さんが選んだのは江戸・天保期(19世紀前半)創業の萬年屋「神撰(しんせん)」と明治12(1879)年創業の小池糀店の「自然派」。小倉さんは「どちらもみそ蔵で試食し、『みそじゃない。チーズだ』と衝撃を受けました。長野のみその個性の豊かさを紹介したくて置き始めましたが、ファン拡大中です」と話す。
デパート担当者によると、「神撰」は最初に少量100グラムパックで味を試し、気に入って500グラム入りを買う人が増えている。またデパートの飲食スペースで「自然派」をベースにした担々麺が好評で、帰りに「自然派」を求める人が多い。
チーズの風味はみそ玉ならではの産物で、ポイントは塩。一般的なみそは煮た大豆をつぶし、糀と水、塩を混ぜたあと樽(たる)に詰め、発酵させて出来上がる。
一方、「神撰」「自然派」は蒸した大豆をつぶし、円筒状に固め(みそ玉)、蔵で寝かせる。この段階では無塩のため、それぞれの蔵にすみ着いた菌がみそ玉に付き、チーズのような独特の風味を生みだす。最後に塩、糀、水をみそ玉に混ぜ、再び熟成させる。

手間かかり衰退 県内ほぼゼロに

みそ玉造りは1300年前、朝鮮半島から日本に伝わったとされる。戦争直後まで一般的な製法だったが、ほぼ手作業なため廃れていき、「今では県内のみそ生産量の0・1%にも届かない」(萬年屋)という。
みそ玉にこだわる理由を萬年屋女将(おかみ)の今井香織さん(51)と小池糀店専務の唐沢尚之さん(51)は「みそ玉のみそはおいしいし、みその原点が無くなるのは惜しい。それに小さなみそ蔵が生き残るには個性ある商品が必要」と、同じ考えだ。
発信力ある小倉さんに注目され、東京の消費者に浸透し始めたことに2人は「自慢の味が愛されることはうれしい。いっそう丹精込めます」。お薦めの食べ方について今井さんは「豚汁やつみれ汁など肉や魚、野菜が豊富なみそ汁に」。唐沢さんは「ナスとピーマンのみそ炒めやパスタソースの隠し味に使うのも好評です」と付け加えた。
萬年屋TEL0263・32・1044、小池糀店TEL0264・22・2409。共にネット販売もある。