創業100年迎える老舗映画館 東座支える合木こずえさん

塩尻市大門四番町の映画館、東(あずま)座が9月、創業100年を迎える。大正、昭和、平成、令和と映画文化を発信し続け、「単館系」として営業を続けるのは東座を含め県内で3館のみだ。
1922(大正11)年に芝居小屋として始まり、先代の合木茂夫さん(故人)が60(昭和35)年に「東座」の社長に。街のにぎわいづくりにも一役買ってきた。
複合映画館(シネマコンプレックス)の台頭や映画のデジタル化などの波にほんろうされる老舗映画館が多い中、「父が残した映画館を守りたい」と現社長の合木こずえさん(63)は揺るがない。

東座の映写室。合木こずえさんがコンピューターで上映開始の操作をする。隣には高さ2メートル近いフィルム映写機。先代で父の茂夫さん(享年82)が使っていた。
上映するのはミニシアター系作品と、映画コラムニストでもあるこずえさんの琴線に触れた作品を紹介する自主上映会「FROMEAST」の、月に計6本ほど。日々、多くの試写から目利きのこずえさんが選ぶ作品に、信頼を寄せるファンも多い。

東座は1922(大正11)年9月17日、芝居小屋として市川牡丹一座を招聘(しょうへい)してこけら落とし。昭和に映画館となり、茂夫さんが60(昭和35)年、社長に。66年に建物を新築した。
当時は東宝、松竹系作品や日活を上映。自ら登場人物に扮(ふん)して街なかを宣伝して回った。ダンスホールの2階は、日活が経営存続のために始めたロマンポルノを上映するピンク映画専用劇場に。茂夫さんは時代を先読みした柔軟な思考力で経営した。
映画の隆盛期に生まれたこずえさん。当時2階は桟敷席だったという。「幼い頃は朝から晩まで映画館の中にいた。お客さんたちにお菓子をもらうのも楽しかった」
女優に憧れ、高校卒業後は日本大芸術学部演劇学科へ。劇団などを経て都内の海外テレビ局代理店で働き、欧州作品の魅力に触れてきた。
平成になり娯楽色の強くなった映画業界。こずえさんは「映画の芸術、文化性を伝えたい」と95年、東座で欧州映画などを紹介する「FROMEAST」を立ち上げた。家族ではあるが、東座に借り館料などを払う契約をした。東京で働いた収入を充て、塩尻と行き来しながら自主上映会を続けた。
15年がたった時、茂夫さんが病に倒れた。職人気質で寡黙だったが、家族を尊重し夢を後押ししてくれた。功績を継ぎたい―と、こずえさんは2010年、社長に就任。翌年、茂夫さんは亡くなった。

現在は、こずえさんと母、節さん(85)、妹のかなえさん(61)、かなえさんのパートナーと4人で運営。常連客の一人で子どもの頃から訪れる田中初美さん(64、大門二番町)は「映画はいろいろな世界を知り肌で感じることができる。心に染みる作品を上演する東座は身近で大切な存在」。信州美術会など会員の田中さんは毎月1枚、上映作品の印象的なシーンを描き同館に展示していている。
新しい取り組みと古き良きものを両立する東座。上映作品と関連したイベントを開くなど客層や見聞を広げるほか、「色気のあるものも大事なサブカルチャー」と、2階は県内唯一のピンク映画上映館として残している。
「お客さんの生きがいや刺激になる映画を提供していきたい。ここを守るのが自分の使命であり夢」とこずえさん。天国の父の笑顔を思い浮かべながら家族経営を続けていく。