塩尻に「帰省」まちづくり学ぶ 東京大3年の早川芽生さん

出会いのわらしべ体験一冊に
大学を休学し地域と関わり

「体験のわらしべ長者」と、東京大工学部3年の早川芽生さん(21)は自らを振り返って言う。昨夏、塩尻市に滞在し、まちづくりに関わる人と次々に知り合った。今春からは休学し、全国各地で芋づる式の出会いを続けている。塩尻も定期的に「帰ってくる」感覚で訪れている。
早川さんは愛知県一宮市出身。一昨年、東大に入学し、関心があった建築の企画に関わるうちに「まちづくり」という言葉が気になった。実地を訪れることを始め、福井県鯖江市の次に来たのが、塩尻市だった。
昨年3月、同市贄川のシェアハウス「宿場noie坂勘」に3日間滞在した。ここや木曽平沢、大門での交流に刺激を受け、次の夏休みに再訪することに。2カ月過ごし、辰野や諏訪、飯田にも足を延ばした。
起業家支援施設や商店街、古材のリサイクル店、ゲストハウス…。出会った人の勧めで、さらに別の人に会いに行った。「いろんな人と信頼関係を築ける。ずうずうしいんです」とは、冗談交じりの自己評価だ。期せずして体験が積み重なり、内容が膨らんでいくプロセスを、物々交換で稲わらを元手に大金持ちになるおとぎ話になぞらえた。

その体験を中心に今年3月、本を出した。タイトルは「いっぽ。」(印刷・製本は松本市の藤原印刷)。まちづくりについて「外から人を呼ぶことではない」「結局、地域でどう生きるか自分に向き合うことになる」と、独自の考察を記した。
大学を休学し、地域に関わる経験を深める道を選んだ。出版資金をクラウドファンディングで募った際にできたつても使い、和歌山、京都、伊豆、東京、宮城と渡り歩き、農家で働くなどして、新たなわらしべ体験を続けている。その間、5月には信州を南から縦断した。
キーマンと目される人を巡るうちに、逆に「まちづくりが分からなくなった」と早川さんは言う。必ずしも地域全体のことを考えている人たちばかりではないからだ。
「『地域のためファースト』みたいな漠然とした志向ではなく、自分や家族、近所のことを思ってやっている。自分らしさに忠実に向き合っている」。それがかえって、地域の活性化に影響力を持つ不思議さ。
考えてみると、自身も「本を書くとき、ひたすら人のことを思い浮かべていた」。知り合いの多い塩尻は、「いつ来ても、誰かに会える」場所だという。各地で人に会い、地域と自分に向き合う生活を続ける軸の一つ。今月末も塩尻に「帰省」する予定だ。