【記者兼農家のUターンto農】#66 酷暑

恵みの日光、今年はたっぷり?

稲に穂が出た。田植えから2カ月余り、まずまず順調だ。これから、米粒にでんぷんなどの栄養がため込まれていく。おいしさに直結する登熟(とうじゅく)期だ。
この間、晴れれば目いっぱい光合成が働く。人間が暑さにあえいでる時に、稲は喜んで次世代の種子づくりに励んでいる。恵みの雨ならぬ、日光だ。
ところが、去年はこの恩恵にあずかれない期間が長かった。雨天が多く、夏の甲子園は順延続き。特にお盆の雨はひどく、岡谷市では母子3人が土石流に巻き込まれて死亡する災害が起こった。
迎えた収穫の秋、うちの作柄は芳しくなかった。収量がやや少なく、粒は小さめ。長野県の作況指数も「やや不良」の97だった。日照不足が原因に挙げられた。「あのせいか」と、夏の空模様を振り返ったものだ。
今年の夏はどうか。今のところ、晴れて暑い日が続いている。へばり気味の人間を横目に、稲は張り切っているだろう。
畑で、別の植物も穂を出した。イネ科のソルガム。肥料にするための作物を緑肥というが、その一種だ。ある程度育てて刈り倒し、土にすき込む。分解されると、微生物が増えたり、ソルガムにたまった窒素やカリウムが土に入ったりする。
うちでは、リーフレタス収穫後の畑で作っている。穂が出る前に刈り倒すのが本来だ。茎が柔らかいと、分解が早いからだ。出穂後だと、固くなってしまう。そう言えば、稲も、重くなる穂を支えるように茎が丈夫になっていく。
それでいくと、今回のソルガムの処理は遅れた。ただ、この畑の場合、今年はもう作付けしない。分解の時間はたっぷりある。残暑は促進剤の役割をしてくれるだろう。
秋の稲刈りや来年のリーフの豊作を願うなら、酷暑も幾分ありがたく思えてくる。