信州大「箏曲サークルことこと」 キャンパスに響く箏の調べ

「銀嶺祭」での発表に向け稽古

夕暮れ時のキャンパスに響く箏の調べ。みずみずしい音色を紡ぐのは、信州大の「箏曲サークルことこと」のメンバーたちだ。初心者が多く、始めたきっかけはさまざまだが、皆が和の音色を楽しみ、大切に奏でている。21世紀生まれが魅了される箏の魅力とは―。
松本キャンパス(松本市旭)の旭会館にある和室。所狭しと並べた箏に、各人が真剣な表情で向かう。初心者が弾く音色も、たおやかだ。
メンバーは約20人。集まって練習するのは週1回だが、学内の別の場所で自主練習に励む人もいる。例年は大学祭「銀嶺祭」や、大学図書館などで演奏を披露したが、ここ2年はコロナ下で発表の場を失い、モチベーションの維持が難しかったという。「今年こそは演奏を届けたい」と稽古に熱が入る。

医学部1年の一瀬多恵さん(18)は、高校箏曲部が舞台のアニメ「この音とまれ!」に影響されて入会した。アニメで描かれた大人数での演奏シーンに「こんなにきれいな音が出るんだ」と引かれたという。「触れたり知ったりする機会があれば、魅力的な楽器」と話し、音色に浸りながら練習する。
副サークル長で理学部3年の塚脇遼さん(20)は、入学後に箏を始めた。それまで楽器を習った経験はなく、「ピアノやギターは1人でも始められるが、箏は難しい。簡単に音が出せて、皆で合わせられるのが魅力」。ほかのメンバーからは「かっこいい」「和のものに憧れる」「他の楽器サークルと違い、初心者でも挑戦しやすい」といった声も聞かれた。

サークルには今年、大きな変化があった。指導者を定期的に招き、教わることにしたのだ。奏法や楽譜の読み方などは長年、経験者や上級生が初心者に伝授してきたが、教える側に不安があったという。
サークル長で人文学部2年の加藤莉佳さん(20)も「私も入学後に始めたばかり。教えられないことに、すごく悩んだ」。そこで、楽器のメンテナンスなどで縁があった琴光堂和楽器店(同市城東1)の紹介で、箏曲演奏家の押切さちさん(39、同市)が5月から指導を引き受けた。「意欲とのみ込みの早さは、若さだけが理由ではない。教えがいがある」と押切さん。
演奏曲は、これまでポップスが多かったが、指導者を迎えたことで、「花筏」など箏のための曲にも挑戦できるようになった。加藤さんは「いろんな音が組み合わさる音楽が主流の今、シンプルで心が落ち着く箏の音が好き」とうなずく。
心待ちにするのは、10月に開催予定の銀嶺祭。メンバーらは、気持ちを盛り上げながら絃をはじく。「(当日は)和服を着て演奏したいね!」