
近年は地震だけでなく大雨などの自然災害が増えて、防災力が求められています。そこで注目されているのが「防災キャンプ」。昨秋、美鈴湖もりの国オートキャンプ場(松本市三才山)で同キャンプを主催した、NPO法人信州まつもと山岳ガイド協会やまたみ(同市)の太田亮さんに話を聞きました。太田さんは山岳ガイドで防災士の資格も持っています。
★防災キャンプの目的・内容
一番の目的は「非日常」を経験しておくことです。この体験で避難の準備や防災への意識が高まればいいですが、すぐにそこまではいきません。それでも有事に遭遇した際、「あんなことを学んだ」と思い浮かべることができれば幸いです。
防災キャンプでは、災害時にも役立つ知識やアウトドアグッズの紹介、テントを設営して寝袋で寝る避難生活を体験してみます。
また、水の災害などに役立つひもの結び方なども学びます。1回で習得するのは難しいですが、それを入り口に家に帰って動画などを見たり、次の講習会に参加したりといったアンテナが広がることを願っています。SOSの発信方法、災害用伝言板(web171)の話もします。
★非日常を体験する狙い
東日本大震災の津波に襲われた岩手県釜石市で、地区内で隣り合っていた中学生が小学生の手を引いて高台に避難し無事だったという出来事がありました。
震災が起きた時間は学校での活動を終えた後。同市では日頃から津波防災教育に取り組んでいて、市内の全小中学生約3000人のほぼ全員が無事だったそうです。そこから学ぶのは、有事に備えて知識を持っておくこと、そして非日常を体験することです。
地面にじかに寝転がることや食事も大切な体験です。キャンプでは牛乳パックをお皿代わりにして食べることもしました。「箸やフォーク、スプーンが使えず抵抗がある」という子どももいましたが、災害時はそういうこともあります。箸がなければ別の物で代用するという経験をしておくことも必要です。
登山やキャンプは非日常が魅力で、それを求めて楽しむ人が多いと思います。でも、災害が起きると日常が一転、非日常になります。
信州の子どもたちの大半は、学校活動で登山やキャンプの経験があります。いざという時にその経験が生かされたり、近くのお年寄りをサポートできたりするといいなと思います。
★キャンプ参加者の感想
テントや寝袋、ランタンやヘッドランプが未経験の子どもが大半だったので、とても楽しんでくれました。大人の中には「どこかで学びたいと思いつつも今まで機会がなかった」という人もいました。本来は1泊で実施したかったのですが、コロナ禍で日帰りにしたため「覚えたいことが多過ぎて、頭が追いつかない」という声もありました。
でも繰り返しになりますが、一度に覚えてほしいということではありません。災害はいつどこでどんな状況で遭遇するか分かりません。そんなとき、わずかな知識や経験でも、自分のよりどころとなってくれるはずです。
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同協会は秋に、防災キャンプを3回に分けて行う予定です(詳細はフェイスブック。機会を見つけて防災の知識を身に付け、体験してみることが大事だと思います。