パティシエの宮上さん 古里 桑村でお菓子教室

大桑村長野。のどかな田園風景が広がる道沿いに「お菓子教室←」の案内板が立つ。何枚かたどりながら坂道を上っていくと、一軒家に着いた。
「お菓子教室パティシエhideki」。愛知県で30年以上、パティシエのキャリアを重ねた同村出身の宮上英樹さん(56)が古里に戻り、空き家だった自宅をリフォームし今春、始めた。
洋菓子店開業も考えたが、こだわるのは「手作りの良さ」。家族が大切な人を思いながら作る楽しさを地域で広げたかった。
甘いものが好きで入った世界。夢中で働き50代半ばになった。今後の人生を見据えた時に浮かんだのが古里の人々と風景。洋菓子作りを広げながら、活性化にも一役買えればと歩み出した。

知人と楽しむ1グループ制

甘い香りが漂うキッチン。宮上英樹さんが焼き上がったクッキーをオーブンから取り出した。「お菓子作りはちょっとしたこつを覚えれば上手にできる。家族の喜ぶ姿を思い浮かべながら作ったら、楽しいですよね」
宮上さんの教室「パティシエhideki」は、完全予約で知人だけで参加できる1グループ制。フルーツやチョコレートのショートケーキ、チョコレート菓子など9種類ほどのメニューがある。
参加費は完成品の持ち帰りでホールケーキ1個が3500円から。何人でも参加でき一つのメニューを複数人で分けたり、何種類かのメニューを組み合わせたりでき、自由度が高いのも特長だ。
小学生から高齢者まで幅広い世代が参加する。「皆さん、コミュニケーションを楽しみながら作っています」と宮上さん。
大桑村生まれ。蘇南高校(南木曽町)を卒業後、愛知県で自動車部品メーカーに就職しライン作業に携わった。定刻に終業し完全週休2日制だったが「もっと別の人生を歩みたい」と3年後に退職した。
菓子が好きだったことから洋菓子の道へ。大手洋菓子メーカーや著名ホテルのデザート担当、チョコレート専門店などで30年以上、さまざまなスイーツに携わった。
勤務先が開く菓子教室の講師を任され、地域の高校で非常勤講師を務めたり一般向けに教えたり。「それまで覚えた技術を伝えるととても喜ばれ、うれしかった」。職人かたぎで作ってきた仕事とはまた違ったやりがいを感じたという。
洋菓子業界で30年以上、多忙な日々を過ごしてきた。だが、このままの生活を続けたら後悔するのでは…と妻に相談。2人の娘も自立しており、「やりたいことをやってみたら」と背中を押された。
大桑村の実家は2年前から空き家だった。周辺にも空き家が目立ち人口減も気になった。愛知県内での開業も考えたが、実家を何らかの形で次世代につなげられたらと、洋菓子教室にすることを決意。2年ほど準備してきた。
教室主宰の原点は「手作りの魅力」だ。非常勤講師の際、高校生に今まで一番おいしかったケーキを尋ねると「家族が作ってくれたケーキ」という答えが多かった。手作りすることで会話や楽しさ、喜び、思い出が何倍にもなる。それを伝えたいと願う。
今後は村の「桑の葉」を活用した菓子の開発など、地域おこしにも携わりたいという。「洋菓子で少しでも地域の元気に関われるよう、いろいろな可能性を考えていきたい」
教室の詳細はインスタグラムのhideki.m9595に掲載。