【ビジネスの明日】#40 松本ゼミナール社長 傳田仙太郎さん

利用者の満足を徹底追求

25年前、個人経営の学習塾としてたった一人で立ち上げた「松本ゼミナール」。今では関連会社3社を持つ、地域のリーディングカンパニーに成長した。その原点には、まだ知名度もない頃に塾に足を運び、口コミで生徒を広げてくれた会員らへの感謝の気持ちと、徹底して追求してきた顧客満足の姿勢がある。
「傳さん」と生徒たちに慕われる、飾らずひょうひょうとした人柄。だが、語り出すと一変、「一番大事なのは、教える技術ではなく、子どもたちのために全力で、必死で教えること。その熱意で子どもたちが変わり、奮起するんです」と力がこもる。
松ゼミの最大の特長は、生徒個々に合った教え方や教材にこだわる「オーダーメード授業」。集団授業と、生徒2人に対し先生1人の個別指導を、教科ごと、日程も自由に選べるなど、柔軟に対応する。複雑になりがちな料金体系も、入会金と授業料、教材費実費とシンプル。「利用者目線」と好評だ。
成績向上、志望校合格が大命題の学習塾だが、傳田さんは「楽しく成績が上がることが大事。フレンドリーで信頼できる先生がいて、悩み相談にも乗ったり、子育てを全面的にお手伝いしたいとの思いが強い」と言う。
少子化の中、学習塾業界も「きちんとした塾が選ばれ、生き残る時代」。現在、松本市を中心に11の教室を展開する。昨年は入会者の98%が塾生からの紹介だったことから、利用者の支持や満足度の高さが分かる。業績も「微増だがじわじわ伸びている」と堅調だ。
新たな取り組みとして、昨年設立した新会社の運営で、デジタルと対面の指導を組み合わせた新形態の「松ゼミ・シナジア」を市内2教室で展開。学習塾では全国初というOMO(デジタルとリアルの融合)のコンテンツなどをシンガポールの企業と提携して取り入れる。最先端の学びに注目が集まる一方で、「人間が人間に教える部分、人と人との学びは変わらない」と従来型の授業も大切にする。
自らの現在を「さまざまな人との出会いで、導かれたようなもの」と謙そんするが、世界の最新動向の情報収集など、努力は常に欠かさない。企業理念の「夢をかなえ、自分と自分の周りの人々を幸せにする力を持った人間の育成」を体現しつつ、さらに進化を続ける。

【プロフィル】
でんだ・せんたろう1967年、中野市出身。神戸大卒業後、大手生命保険会社に勤めた後、学習塾業界へ。97年に松本市島内の教室を開設、以後教室を増やしてきた。松本市在住。