
子育て軸に自分のペースで
「仕立て屋まぁる」を営む森綾子さん(50、松本市波田)は、3人の息子(大学3年、高校3年、中学2年)の母。大好きな洋裁を教えたり注文服を作ったりしながら、子どもたちの成長を見守っています。
病院ボランティアも実現
★次男の大病と家族の支え
森さんは沖縄県生まれ。中高生の頃からバッグや小物を作ることが大好きで、北海道大在学中に同じサークルで知り合った夫(50)と1999年に結婚。夫の転勤先だった松本市で暮らし始めます。
2001年に長男、04年に次男、08年に三男が誕生。次男は生後11カ月の時に大病を患い、手術のため2カ月入院します。夫は長期出張が多かったため、手助けが必要なときは互いの両親を頼りました。
「『明日来て』という急なお願いにもかかわらず、母は沖縄から、しゅうとは三重県から交代で来てくれ、本当に助かりました」
自分が倒れてはいけないと懸命だった森さん。「次男を看病している時は上と下の子をふびんに思うこともありましたが、大きくなった息子たちに当時のことを聞くと親の考えとは違いました。兄弟3人が互いを思い合い、心優しく育っていることをうれしく思います」
★「仕立て屋まぁる」立ち上げ
子どもたち3人の産着から七五三の羽織、はかま、着物まで手作りした森さん。「子育てを軸に仕事もしたい。自宅で、自分のペースでできる洋裁は私にぴったり」と、次男の週2、3回の通院、三男の妊娠中に委託販売を始めます。
一方で、洋服作りを基礎から学ぶため文化服装学院の通信教育講座を受講します。修了後の16年にフルオーダーメイドの「仕立て屋まぁる」を開業。19年には注文者の体形をより把握するため「骨格診断アナリスト」も取得しました。
服の評判は上々でしたが、さあこれからという時コロナ禍に。対面での接客が難しくなり、「先を見据えると製作販売だけでなく、講師として専門知識を伝えられたら」と、文化服装学院通信教育講座服飾コースの学習グループ指導員に挑戦。21年に認定を受け、新しく受講生となった人や受講中の人たちにアドバイスなどができるようになりました。
自宅をリフォームして今年7月から洋裁教室を始め、プロの技や売れるためのアドバイスなどを惜しみなく伝えています。また、次男の入院をきっかけに考えた「洋裁で病院ボランティア」も実現し、支援が必要な患者家族をサポートしています。
★息子たちへ
「今年3月の夫の誕生日に、次男が中心になって寄せ書きとイラスト入りの色紙を用意しました。私が見守る中、次男が1人でケーキや夕食作りを担当し、夫はもちろん家族みんなが喜ぶすてきな夜を過ごしました。
普段から息子たちはそれぞれ私を誘ってくれ、カフェなどへ一緒に出かけています。今ある当たり前の幸せに感謝する日々。3人には自分らしい人生を歩んでほしいです」