【中村小太郎・駆け出し百姓の自然農奮闘記】#36 「昆虫界の愉快犯」

「ホモ・ルーデンス」すなわち「人間は遊ぶ存在である」。ホイジンガというオランダ人歴史学者が唱えた説です。でも里山で農業をしていると、はたして人間だけだろうかと思うことが多々あります。
この時期。農家は、稲刈り前にする大事な作業である冬野菜の種まきで忙しいです。大根や白菜、来年収穫の玉ネギなどをまきます。発芽し、双葉がひらくと、収穫のことやお鍋のことを考えて顔がほころびます。
私は自然農法を心がけているので、畑は地下も地上も虫の楽園です。いろんな虫がいます。
ネキリムシ。コレが厄介です。夜行性で昼間は地下に潜んでいます。夜に出てきて、せっかく双葉が開いたような時期の茎の地上部分をかじります。朝見回ると、苗が根元からパッタリ倒れています。ショック。同じ場所に種をまき直すいたちごっこが続きます。「ずく」が勝負です。
この虫は、苗の生え際のそこしか食べないんです。農家をあざ笑うかのような所業から「昆虫界の愉快犯」と呼んでいました。
この原稿を書くために調べ直したところ、あごの力が弱く、幼苗の例の場所しか食べられないとわかりました。面白がっていたわけではなかったのね。誤解してゴメン。
でも許さないよ。見つけたらスコップで遠くに連行します。コレを楽しむ余裕ができたのも就農4年目だからでしょうか。