〝左手のバイオリン弾き〟牧さんの人生ミュージカルに

バイオリンパフォーマー、牧美花さん(50、長野市)。生まれつき左手に障がいがあり、右手でバイオリンを、左手で弓を持つ独自のスタイルで演奏する。来年1月には、牧さんの生涯がミュージカルとなり、安曇野市などで上演される。
牧さんの穏やかな人柄、温かい音色に、松本市や安曇野市にもファンは多い。7月には「安曇野公演実行委員会」が発足した。
スズキ・メソードの創始者・鈴木鎮一さんと出会い、牧さんは「救われた」と話す。ミュージカルでは、不自由な手で思うように弾けず、練習がつらかったという牧さんを支え、導き続けた鈴木さんとの師弟愛、見守り続けた母や姉との家族愛などが描かれる。「どの子も育つ、育て方ひとつ」。牧さんは「メソードの理念も伝えられたら」と力を込める。

バイオリンパフォーマー牧美花さんの人生をミュージカルとして上演するのは、長野市にある「NPO法人劇空間夢幻工房」。脚本、演出は同劇団代表の青木由里さん(60、同市)が担当した。タイトルは「チュイチュイ左手のバイオリン弾き」。「チュイチュイ」は牧さんの愛称だ。
3年前、安曇野市で開いた牧さんのバイオリンリサイタルは、昼夜2公演で350人が集まり大成功だった。企画した仲間うちの2人、峯崎庸行さん(79、同市穂高有明)と濱重俊さん(77、松本市蟻ケ崎3)の「次のステップを考えよう」といった思いが、今回のミュージカル上演のスタートだ。
知人でもある青木さんに脚本を依頼し、今春ようやく完成したという。牧さんも「夢幻工房」の舞台に生演奏で参加するなど、青木さんとは10年以上の交流がある。
牧さんは、左手の親指以外の指が短く、関節もなく、固まった状態で生まれたという。松本に住んでいた時、姉の通う松本市のバイオリン教室で、鈴木鎮一さんと出会った。「お嬢ちゃん、バイオリンを弾いてみない?」と言われ、習うことに。2歳8カ月だった。
最初は左手に弓をひもでしばって落とさないようにした。練習は嫌いだったが、「バイオリンだけは手放しちゃいけない」と感じていた。
一つ一つできることが増えていく。弦を指ではじく奏法ピチカートでは、血まめを作りながら練習した。「音が出た時は本当にうれしかった」。演奏すると、喜んでくれる祖母らの存在も大きな励みとなった。
子どもの頃感じたままに、現在も肌身離さずバイオリンを持ち歩く牧さん。「鈴木先生、その教えとの出合いがあったからこそ、今の自分がいる。人とのつながりを大切に生きてきた。そうしたことがミュージカルに描かれている。これからの未来を担う子ども、若い母親にぜひ見てほしい」と話す。
峯崎さんらは、牧さんやミュージカルを応援しようと、約20人で「安曇野公演実行委員会」を結成。プロの演劇を見、牧さんの人生に触れてと、11月18日に豊科公民館ホールで開くリハーサルに、安曇野市や松本市の高校の演劇部員らを招待しようと準備を進めている。
子どもの人間力を育てたいという思いは「夢幻工房」も同じだ。音楽や演劇など舞台芸術を子どもに肌で感じてもらおうと「ひかる翼」プロジェクトをスタート。「チュイチュイ―」がその第1弾になる。
歌あり、踊りあり、アニメーションもありというファンタジーミュージカル「チュイチュイ左手のバイオリン弾き」は、安曇野を皮切りに、県内4カ所で上演される。

【「チュイチュイ 左手のバイオリン弾き」安曇野公演】
2023年1月21日午後6時、22日午後1時の2回。いずれも豊科公民館ホール。前売り指定席3500円、一般2500円、高校生以下1500円、親子ペア3000円、一般同4000円。当日は各500円(ペアチケットは1000円)増し。豊科公民館、あづみのコミューンチロルなどで扱う。チケットの問い合わせは実行委事務局(あづみのコミューンチロル)TEL0263・72・3322、劇空間夢幻工房TEL026・284・6430
他に伊那(2月26日)、飯山(3月12日)、長野(3月26日)で上演される。