“山族”たち支える安曇野山岳美術館 来年開館40周年

全国でもまれな山岳画に特化した美術館

全国でも珍しい、山岳画の展示に特化した「安曇野山岳美術館」(安曇野市穂高有明)が来年、開館40周年を迎える。
同館は「一人でも多くの人に山岳画の感動を」と入館料を低く抑えながら、一貫して古今の名作を展示してきた。ただ、個人経営の小館であるため、やりくりは厳しい。コロナという逆風も吹く。
陰に陽に支えているのが、90年近い歴史を誇る「日本山岳画協会」(本部・東京都台東区)だ。同館を「山と絵を愛する者たちの殿堂」と称賛。東京からも会員が駆け付け、企画展などの折に協力している。
同館の岩佐峰子副館長兼学芸員(66)も「当館が山岳画の継承と振興にまい進できるのは、協会のおかげ」と感謝してやまない。

JR大糸線穂高駅から車で10分。北アルプスの麓のアカマツ林の中に、安曇野山岳美術館は立つ。
同館は1983(昭和58)年、松本市出身の故水上巌さんが私財を投じて開いた。水上さんは若い頃から登山に興じ、後年は山岳画収集にも注力。泰斗・足立源一郎(1889~1973年)の「北穂高岳南峰」など名品も多い。同館はそれらを常設展示する傍ら、現役画家の秀作を紹介している。
山岳画は単純な山の風景画とは違い、画家が自ら高山に登り、高潔な人格すら漂わせる山容を描いた絵をいう。登山と絵の両方の練達者のみ可能な画業だ。その山岳画を特集する美術館はあっても、同館のように「山岳画だけ」はまれで、異彩を放つ。
水上さんは2009年に死去。今はその遺志を長女の岩佐峰子さんが継ぐ。ただ、岩佐さんが学芸員の資格を取ったのは昨年3月で、「胸を張れる企画展を開けるほどの力はまだないし、コロナ禍で入館者が大きく減り、経営も苦しい」と打ち明ける。
そんな岩佐さんを「日本山岳画協会」が支える。1936年に足立や「山岳画の祖」と称される吉田博(1876~1950年)らが創設した山岳画家集団で、現在は東京など関東在住者を中心に23人の会員が所属する。
協会代表の杉山修さん(75)によると、20年ほど前、松本など地元の会員が訪れたのを機に、館の名が協会内で広まった。2016年以降、協会展や会員の個展を毎年開くようになり、同館のPRにも努めている。
昨年は杉山さんの奔走で吉田、足立の2人展が実現。杉山さんは「登山家憧れの地で、協会に縁の深い名作の鑑賞も会員の作品発表もできる、かけがえのない施設」と話す。
同館で開催中の「辻まこと展」(10月5日まで)では、山岳写真でも著名な小谷明さん(88)があす18日の座談会に出演するほか、10月には個展も開く。
杉山さんも小谷さんも都内在住。安曇野は遠いが、異口同音に「亡き水上さんも私たちもみな山族。その連帯感もあり、美術界で孤軍奮闘する館を応援している」。会員たちに励まされる岩佐さんは「来年は、山岳画愛好家の皆さんの期待に応えられるような開館40周年展を実現させます」と誓っている。問い合わせは同館TEL0263・83・4743、ホームページ