
さまざまな事情で親と暮らせない子どもを預かり、家庭環境の下で育てる「里親制度」。子どもの健全な育成を図る上で重要ですが、日本では普及が遅れているといわれます。県松本児童相談所(松本市波田)家庭支援課の小林正樹さんに、里親をめぐる現状や子どもを預かる要件などについて聞きました。里親に登録する2人の話も紹介します。
児童相談所などがサポート
★家庭を必要としている子どもたち
全国にはさまざまな事情で生みの親と暮らせない子どもたちが約4万5000人、県内には約600人います。親の代わりに子どもたちを預かり育てているのは、乳児院や児童養護施設などの施設と、特別養子縁組や里親、ファミリーホームなどです。
施設には役割があり大切な存在ですが、地域と関わる家庭で育まれる環境は子どもにとって重要で、国や県も家庭での養育を推進しています。
★里親の種類と要件
里親制度には四つの種類があります。
親の病気や虐待などさまざまな事情で自分の家で暮らせない子どもを家庭に迎え入れる養育里親。養子縁組を前提とした養子縁組里親。虐待を受けたり障がいがあったりなど、一定の専門的ケアを必要とする子どもを養育する専門里親。死亡や行方不明、入院などで親が養育できない場合に、3親等以内の親族が子どもを養育する親族里親です。養育里親と専門里親は、国から一時的に子どもを委託される形となるため手当が支給されます。
養育里親の場合、預かる期間は数日間から18歳(原則)になるまで。里親になるのに特別な資格は必要ありませんが、子どもを養育するために必要となる条件はあります。例えば心身の健康上の支障がないことや経済的に困窮していないこと、住居の状況など。気軽に乳児院か児童相談所へ問い合わせてください。
県の里親認定基準を満たすと児童相談所などが自宅を訪問し、子どもが安全安心に暮らせる環境かどうかを確認します。続いて養育に必要な研修や実習などを複数回受けてもらい、最後に社会福祉審議会里親審査部会が審査し、適任と認められた方は里親に認定され、県に登録されます。里親として受け入れできる性別や年齢、期間などを事前に伝えることもできます。
★子どもの委託打診・チーム養育
里親に登録されても子どもを委託されるとは限りません。子どもの状況と、里親の受け入れ希望条件が合った場合に児童相談所が委託を打診。面会交流を重ね、問題がなければ正式に委託となります。
委託後も里親家庭だけに負担を強いたり、子育ての全てを抱え込んだりしないよう、児童相談所などが家庭訪問を行い、里親や子どもの相談に応じます。
小林さんは「研修、面接、実習が順調に進んでも、登録まで1年程度かかります。今すぐ受け入れはできないけれど、将来的に預かりたいと考えている方はぜひ相談してください」と言います。
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10月は次のイベントを予定しています。
▽里親さんを知る日in松本紙芝居「里親さんのおうちに繋(つな)がるまで」原画展2日、イオンモール松本(松本市中央4)▽里親家庭の暮らしパネル展示1~31日、塩尻市市民交流センターえんぱーく図書館(大門一番町)▽里親さんを知る日in塩尻絵本「里親ってなぁに?」ワークショップ23日、塩尻市北部交流センターえんてらす(広丘野村)▽里親相談会in松本29日、松本市の県信深志ビル7F(深志2)。相談会のみ要申し込み。問い合わせは松本赤十字乳児院TEL0263・31・5206
里親の声
◆安曇野市在住の男性(61)
「妻から里親制度の話を聞き、『家庭を必要としているお子さんを預かろう』と2005年に登録しました。
15年に養育里親として4歳の子を6歳まで預かり、その後、5歳の男の子を半年、今も別の子を預かっています。
若い母親が一人で子どもを産み、遺棄したという事件を知った時はとても悲しかったです。命を守るため、困っている親には預かり先があることをぜひ伝えてあげたいです。
◆松本市在住の女性(53)
25年前に滞在していたイギリスには「fosterparent(フォスターペアレント)」(里親)が根付いていて、私もいつか里親になりたいと思っていました。
帰国して生まれた娘が物心ついた頃、「妹が欲しい」と言いました。それをきっかけに家族3人で里親についてじっくり話し合い、2020年に登録しました。
コロナ禍の影響で登録まで2年かかりましたが、今は預かる子どもと交流しているところです。