社会での活躍目指して 発達障がい者就労移行支援

work-fitハートフル 松本市

JR松本駅近くのオフィスビルの2階。「work-fitハートフル」と書かれたドアを開けると、デスクで若者らがパソコンを広げている。午前9時55分ラジオ体操スタート、10時に朝礼が始まった。
一見、普通の会社のようだが、ここは発達障がいがある人が、仕事に就くためのサポートをする「就労移行支援事業所」だ。10代から40代までの20人余りが通う。
今や10人に1人といわれる発達障がい。診断はつかなくてもグレーゾーンの人も多い。得意不得意の分野がはっきりしている、コミュニケーションが苦手─などの特性がある。会社にうまくなじめない人、辞めざるを得ない人を、どう支援し、社会で活躍してもらうか。支援事業所を取材した。

特性生かし得意分野伸ばして

2019年秋設立の就労移行支援事業所「work-fitハートフル」(松本市深志2)。平日の午前10時から午後3時まで、オフィス風のフロアでさまざまな訓練が行われている。
朝礼では、日替わりの当番が、一日のスケジュールと仕事の心構えを読み上げる。人前で話す訓練を兼ねる。
フロア前方には上司役のスタッフが座る。「ただいま、お時間よろしいでしょうか」─。訓練生は1日3回、作業計画や進ちょく状況を説明する。話しかけ方、要点をメモして分かりやすく話す練習を繰り返し、仕事で必須となる上司との対話に慣れていく。
毎日1時間程度の個人ワークは、発達障がい者向けプログラムを提供する東京の「Kaien」のサイトを使ったパソコンスキルの練習や、ネットで求人検索をして履歴書を作るなど、個々のペースで行う。ビジネスやキャリアの話を聞いて勉強したり、自分の意見を述べ合ったりする「講座」の時間もある。
午後は2グループに分かれ、週替わりの内容で実践的に行う「職業訓練」がある。この日の課題は、経費精算の書類作成と求人広告の制作だ。求人広告は、見やすくて人目を引く、相手に興味を持ってもらう─などが重要だが、相手の立場に立って考え、想像することが苦手な人が多い。在宅者も参加しオンラインで行われた発表の場では、工夫した点、気になった部分などを互いに評価し合った。

適性テスト行い個別の支援計画

訓練生個々の特性や能力はさまざまなので、最初に適性テストを行い、個別の支援計画を作成。スタッフが訓練から就業の面接まで同行するなど、きめ細かくサポートする。
スタッフリーダーの荒井祐香さん(40)は「発達障がいのある人は得意不得意の凸凹が大きく、生きづらさを感じたり、職場で注意されたりする場面も多い。自分を知り、得意分野を伸ばす支援で、本人が希望する就業に結びつけたい」と話す。
訓練生たちも「パソコン技術を一から学べた。仕事のスピード感や正確さが自分に足りないと分かった」(40代男性)「短大を卒業したが就職が難しかった。社会人の訓練は最初は難しく感じたが、徐々に慣れて習得してきた」(20代女性)などと、自身の特性を知り、少しずつ自信を付けている。
開始から3年弱。金融機関や流通、パソコンでの在宅業務などの就業に14人を送り出した。今春からは就労定着支援事業として3年間、会社訪問や面談など、長く働いてもらうための支援もする。
「ハートフル松本FVP」の大塚由紀子社長は、約20年前に東京で、障がい者の雇用機会創出や就労支援のための会社を設立。縁あって松本でも事業所を運営する。
「大人の発達障がいは独特の働きづらさがあり、支援サービスが必要と考えた。最初は興味を持つ人も少なかったが、訓練生の就職定着率が100%で、関係機関に評価をいただき、やってきたことが間違っていなかったと感じる」
見学、体験は随時受け付ける。午前9時~午後5時。TEL0263・88・8550