有明の中秋の名月が松本城の鯱と共演(松本市)

月模様が鮮やかに浮かび上がる「中秋の名月」が、夜明けに松本城大天守の鯱と共演。避雷針の先でカラスが羽ばたき飛び立った=9月11日午前5時25分

秋の夜長に名月を愛でる

今年の中秋の名月は9月10日だった。11日早朝、松本城大天守の鯱(しゃちほこ)と有明の名月が共演。脳裏に描いた光景に1200ミリの超望遠レンズで迫った。狙った昇る名月は雲に隠れ失敗。徹夜で追いかけ、明け方気象条件が味方し撮影に成功した。
月は、古くから人々に親しまれてきた身近な天体だ。月の満ち欠けを基にした旧暦8月15日(十五夜)の満月を「中秋の名月」と呼んでいる。秋の七草であるススキの穂を飾り、三宝にのせた月見団子やおはぎをお供えして、月を愛(め)でる習慣が今も伝わっている。ちょうどこの頃、里芋の収穫祭と相まって里芋をお供えすることから地方により「芋名月」とも呼ばれている。
中秋の名月(十五夜)を眺めたら、翌月の「十三夜」の月を「後(のち)の月」と呼び、合わせて眺める日本独特の風習がある。ルーツは諸説ある。平安時代の宇多天皇(867~931年)が十三夜の月を愛で、「今夜の名月は並ぶものがないほど優れている」との詩を詠んだ記述がある。
月見の宴を催し詩歌を楽しんだ醍醐天皇(885~930年)が十三夜の月見の始まり、との説も。「後の月」は、この時季の栗や枝豆をお供えする風習から「栗名月」や「豆名月」とも呼ばれる。
名月を愛でる日本人の繊細な心の奥深さが伝わってくる。次の十三夜は、10月8日である。
(丸山祥司)