松本市美術館でユニークアート鑑賞会

美術館では静かに絵を見る-というイメージが強いが、1枚の絵画を複数人で見て、考えて、話して、聴く-というユニークな鑑賞会「対話型アート鑑賞会」が9月27日、松本市の市美術館で開かれた。仕掛けたのは同市在住の滝澤充恵さん、中山英子さん、伏見由紀さんの3人でつくる「re◁un(リアン)」。「大人の学び場をつくりたい」という思いが核になる。
キーワードはアート、哲学、歴史といい、第1弾にアートを選んだ。スマートフォンやパソコンで瞬時に世界中の情報を知ることができる現代では、ものごとをじっくり観察し、深く考え、問うことがなくなっていると危惧。画家や制作年などの知識ではなく「直感と論理をつなぐ」鑑賞会で、松本市では初開催という。ユニークな会の現場をのぞいた。

「知識」は無用自分の視点で

松本市美術館講義室に集まったのは男女6人。一般社団法人日本アート教育振興会(東京)認定の「アートマインドコーチングアドバンスコーチ」の資格を持つ、伏見由紀さんが講師だ。この日の題材は、フランスのジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593~1652年)の「クラブのエースを持ついかさま師」だが、こうした画題などの“知識”は無用の鑑賞会だ。
自己紹介や鑑賞会の概要説明の後、早速スタートした。「絵の中で、どんなことが起こっていると思いますか」など、伏見さんが誘導していく。「だまし合い」「ポーカーの勝負、左の男の人がいかさま師」「左の男の人の目線がおかしい。描かれなかった空間に、黒幕がいるのでは」など、絵から受ける印象、その背景にあるストーリーなどを推察する。正解、不正解はなく、それぞれの参加者の視点が興味深い。
ユニークな鑑賞会を主催するのは、松本市在住の40~60代の3人の女性、滝澤充恵さん、中山英子さん、伏見さんでつくる「re◁un」。英語で、再びなどを意味する「re」と、打ち消しの「un」の真ん中に◁を入れ、再生したり、やり直したり、前に進んだり-といった意味を持たせた。
滝澤さんは以前から、「大人になってから、精神的な面で学ぶ機会がほしい」と考えていたという。中山さん、伏見さんも同じ思いを持っていると知り、意気投合。芸術系の大学を卒業したり、クラフト、アート作品に造詣が深かったり-と、アートが共通項だったことから、それを中心にした学びの場をつくることにした。

身につく「力」人生を豊かに

自分の考えやアイデアを発表し、参加者と共有することで、観察力、想像力、コミュニケーション力、美意識など八つの力が養われるという。「仕事上でも使える。人生も豊かになるのでは」と伏見さん。参加者からは「1枚の絵を一方向だけから見るのではなく、いろいろな視点があることを学んだ」「目の前の事象だけでなく、絵の裏にある背景やストーリーを読み取る力が身に付きそう」といった感想が出た。
「これまで、論理的、理性的であることが正しく、直感的、感性的なことは低く評価される風潮にあったが、時代は大きく変化した。社会は変動的で、不確実。個人にも正解のない問題に取り組む『問題発見能力』『問題解決能力』が求められてる。問いかけることで、深く見えてくることがある」と伏見さん。
今後は、外部講師を招き、哲学(精神的世界)、歴史などにも広げていくという。より立体的に、印象的に学びの可能性が広がりそうだ。

【来月の対話型アート鑑賞会】11月9日▽午後の部2時半~▽夜間の部7時~。定員各回8人。体験料2000円。学生1500円。申し込みはこちらから。問い合わせはメール(fushimi.yuki@gmail.com)で。