松本にオリエンテーリングクラブ発足

松本地域の恵まれた大自然の中で、伸び伸びと遊ぼう─。
「地図を読んで自分で進む」オリエンテーリングを軸に、子どもたちに森や野山で体を動かす機会を提供する「松本オリエンテーリングクラブ」(松島義一代表)が、7月に発足した。
松本市のアルプス公園が、活動の主会場。親子で参加できるさまざまな野外スポーツを通して、身近な公園の魅力を再発見し、子どもと親が楽しみながら共に育つことを目標にしている。
1日には同公園の中を走る「親子でトレイルラン」イベントを開いた。参加したのは2歳から11歳までの子どもとその親21人。秋晴れの中、森に駆け出す子どもたちの笑顔が輝いていた。
オリエンテーリングの魅力と、クラブの活動について取材した。

地図を片手に未知の野山ヘ

北欧発祥のオリエンテーリングは、1960年代に日本に輸入されたスポーツだ。競技専用の精密な地図を手に、森の中のチェックポイントを順番に通過してゴールまでのタイムを競う。
特徴は「初見の場所を走ること」と「コースが設定されていないこと」。スタート直前に地図が渡され、地図記号を読み取り、自分で走る方向を見つけながら森の中を自由に走る。体力だけでなく高度な判断力や集中力が求められるため、現在の日本では主に大学の部活動やそのOBなど、限られた人の中で行われているマイナースポーツだ。
県オリエンテーリング協会の木村佳司理事長(60、松本市)は、競技を続けていくと地図を見ただけで光景が浮かび上がってくると言う。「沢に下る傾斜は何度で、その先に岩があり、がけ崩れがあるのでここは注意。広葉樹林の中を進むうちに下草がたくさん生えたやぶになり、突破した先にゴールがある…」といった具合だ。熟練の競技者は前人未到の道を行くハンターのような能力が身に付いているようだ。
松本オリエンテーリングクラブ代表の松島義一さん(60、同)は、2009年に松本市の公園を管理するトイボックス勤務時に木村さんと出会い、オリエンテーリングの魅力に触れ、その奥深さ、面白さに衝撃を受けた。11年に同協会がオリエンテーリングの全国大会をアルプス公園に誘致するなど、競技の普及と松本の公園に人を呼ぶという目的で協力してきた。最近は年に1度、同公園のネイチャリングフェスタで子ども向けに体験会を開催。参加した子どもたちの多くが「またやりたい」と声を上げたことから、同クラブを立ち上げた。
オリエンテーリングの魅力。それは対戦相手との勝ち負けではなく、「地球と自分との知恵比べ」だ。地図記号を駆使して、未知の野山を駆け巡り自分の体力や思考力、判断力を総動員する。子どもから高齢者まで、全ての人が自分の能力に合わせて挑戦できる。松島さんは「今日はこうだった、次はこうしよう…。こんなに自由で楽しいことがあるんだと知ってほしい」と話す。
1日の大会に参加した3歳の坂本麓太朗(ろくたろう)ちゃんは、森の中の傾斜がきつい950メートルのコースを、初めて自分の力で走り切った。父親の拓磨さん(37、大町市)は、自身がトレイルランによく参加するといい、「15年後に息子と勝負できるよう、自分も鍛錬を続けていきたい」とうれしそうに話していた。

【オリエンテーリング初心者講習会&ミニ大会】松本オリエンテーリングクラブ主催で11月20日にアルプス公園で開く。サンプルコースによる地図読みと競技方法のレクチャーを行った後、ミニ大会で実際の競技を体験する。問い合わせは松島さん(メールmatsu@miraiz-corp.jp)。同クラブのホームページはこちらから。