不気味でかわいい表情豊かな張り子 ハリコチドリ・丸山聡美さん

鬼、妖怪、アマビエ…おどろおどろしさの中に愛くるしさが同居するお面たち。作者は松本市里山辺の張り子作家・丸山聡美さん(44)。「ハリコチドリ」の名で活動する。
和紙などを貼り重ねて作る張り子を精力的に作るようになったのは、4年前の節分。わが子を怖がらせるため、鬼のお面を作ったのがきっかけだ。迫力ある赤鬼の大きなお面を見て、子どもたちは大泣きして逃げた。張り子作りの面白さにはまり、干支(えと)や七夕、ハロウィーンなど季節の行事を楽しむために作るようになった。
不気味だけどかわいい―が好きと言う丸山さんが作り出す独特な張り子は、表情豊かで物語を感じさせる。
「和紙の質感を生かして、想像した生き物に命を吹き込みたい」

丸山聡美さんは長野市出身。幼い時から工作が好きだった。妖怪や未確認生物に興味があり、自分で空想したものを絵に描いていたという。
将来は美術の先生になりたいと、信州大教育学部(同市)に進み、工芸研究室で鋳造技術を学んだ。卒業後は市内美術館の学芸員や県内中学校の美術講師などを経て、結婚して松本へ。現在は塩尻志学館高校(塩尻市)と岡谷南高校(岡谷市)の美術の非常勤講師を務め、授業で張り子作りもする。
卒業してからは、自主的な作品制作をしてこなかった丸山さん。娘のために張り子の赤鬼を作ったことをきっかけに、創作意欲があふれ出た。張り子は形も大きさも自由が利く。「作業の全てが楽しい」と目を輝かせる。
最初に、作りたいものの歴史や背景を図鑑などで調べ、自分の中でイメージを膨らます。そこへ日本の古典文様や神楽、世界の民芸的要素などを組み合わせて、独自の世界が作られる。
張り子の作り方は独学。新聞紙や紙粘土で成形した型に、和紙などの紙を何重にも貼り重ねて作る。主に絵の具で絵付けをするが、骨董(こっとう)市で見つけた外国の古い包装紙や古い画集を細かくちぎって、貼り合わせることもある。立体感を出すために、墨汁で影を付けると和紙独特のしわが浮き出てくるのが「また楽しい」。
立体的な形になると見えてくる「表情」があり、制作前に描いたスケッチ通りに出来上がらないのがほとんど。大きいものだと、完成までに約2カ月を要する。「手間がかかる分、作品がいとおしくなります」
「人がお面をかぶって動くだけで、一瞬にして空間まで変化する。自分が想像したものを“存在”させることができるのが、お面の魅力です」。イベントや作家仲間から声がかかると出店し、ワークショップをしたり、松本だるまやヒョウタンなどをモチーフにした手のひらサイズの小さな作品を販売する。
大きなお面の作品を一堂に紹介する個展はまだ開いたことがない。「私のお面はかぶってなんぼ。ただ展示するのではなく、作品をかぶって遊べるような個展をするのが夢です」

ハリコチドリのインスタグラム