一志水鏡さん書作展 自作の句で「こころ模様」表現

「一本の線で喜怒哀楽を」

「その時々の心模様を、拙い俳句に託して、自分の言葉で書きたい」─。
安曇野市穂高有明の書家一志水鏡(本名・大林喜美子)さんは11月1~6日、安曇野※高橋節郎記念美術館(穂高北穂高)で書作展「こころ模様」を開く。この会場で10周年となる記念展だ。
書は、詩や随筆など著名な作家らの言葉を書くことが多いが、今回初めて、自身が詠んだ俳句30句を作品にした。「俳句は省略の美。書も白と黒のせめぎ合いの中で削っていく。そこに共通点がある」と言う。
墨の濃淡、紙の大小、それに合わせた表装…。作品一つ一つが個性を醸し出す。出身の大町市で書道塾「みずかがみの会」を始めて約40年。原動力は、書への飽くなき探究心だ。

紙や表具にも思いを込めて

「水の秋筆に生かされ今生きる」
書作展の会場、※高橋節郎記念美術館にある旧※高橋家住宅(国登録有形文化財)の主屋(おもや)。一志水鏡さん自身が詠んだ句を書いた二つの作品が展示される。
「(この会場で)知らず知らずに10年たった。(書作を)続けてきたからこそ、今がある」と水鏡さん。自身の最近の「心模様」が表れた句だ。
作品のうち、縦長のパネルは「今」の字の一部が一枚目(右側)に掛かり切れている、新しい試みの表装。紙や文字ばかりでなく、表具の形や色も含めて自身の思いを貫く。
ほかに、昨年107歳で亡くなった女流書家・篠田桃紅さんの言葉「百萬(まん)の言葉より一本の線」を横書きで書いた3×4尺の大作も展示する。
水鏡さんが俳句の世界に入るきっかけは、2005年6月6日付の信濃毎日新聞「けさの一句」に掲載された飯島ユキさん(「羅の会」主宰、松本市)の句「考へる時はひらがなさくらんぼ」。「心の中に、すっと入ってきた」。日頃から書きたい言葉などを記すノートに、この句も書き留めておいた。それを書にする機会があり、同会に入会。「みづかがみ」の俳号で月1回の句会に参加し、年6回発行する俳誌「羅」に投句している。俳句に親しむようになり「書も楽しくなった」とほほ笑む。

五つの書道塾で裾野広げる活動

水鏡さんは、小学生の頃から筆を持って書くことが好きで、大学でも書を学んだ。そんな中で、多くの人が分かりやすく読みやすい表現の書を目指す漢字・かな交じりの「近代詩文書」を選択した。近代詩文書を提唱した書家金子●(匡の王が品、右に鳥)亭(おうてい)さん(故人)の息子の卓義(たかよし)さん(06年、63歳で死去)に師事。雅号の「水鏡」は、卓義さんが付けてくれたという。
2002年に第39回創玄展での特選をはじめ05、08年には毎日書道展で毎日賞を受賞、今年の第48回創玄現代書展で6度目の入賞をするなど、輝かしい実績を積み重ねてきた。現在は大町、安曇野、松本市などで五つの書道塾を開き、「教えてもらった近代詩文書の裾野を広げていく」活動を続けている。
文字は形で表される。だが、それが書になったとき「形ではなく、『線』がどう書かれているかが大事」と話す。「削(そ)ぎ取って、削ぎ取って、最終的には一本の線で喜怒哀楽を表現できたらいい」。求める書への思いが、そこにある。

【一志水鏡書作展】
安曇野※高橋節郎記念美術館で11月1~6日午前10時~午後5時(最終日は3時)。水鏡さんが指導する「みずかがみの会」社中展(40点近くを展示)も同時開催。入場無料。問い合わせは水鏡さんTEL090・4159・4859

※=はしご高