水耕栽培で障がい者就労支援

事業所と地域をつなげたい

小さなミズナの苗をピンセットでつまみ、発泡スチロールの苗床に植えていく。「これ、楽しい」。知的障がいのある女性(46)が声を弾ませた。
来月オープンする松本市寿北7の障がい福祉サービス事業所「はなひらく」。女性は、開所前の体験作業に参加した一人だ。定植するミズナの種も自分たちでまいた。「大きくなった。1週間で全然違う」。成長に驚いた。
苗床は、同じ部屋に設けられた育苗棚に移され、培養液と人工光で育てられる。
屋内水耕栽培で障がい者の就労支援をする─。県内初をうたって事業に乗り出すのは、薬剤師で、はなひらく所長の小池雄悟さん(30)。知的障がいの妹が、働くことで症状が穏やかになったという自身の体験が出発点だ。

仕事と仲間があれば変わる

薬剤師の小池雄悟さんは、薬局に来る障がい者に関わりながら、薬以外でもできることはないかと考えていた。
頭にあったのは、知的障がいのある妹のことだ。精神的に不安定だったが、軽作業の訓練を提供する就労継続支援B型事業所で働き出すと、目に見えて穏やかになった。「任された仕事、仲間があると変わる」という実感があった。
B型事業所を立ち上げられないかと、役員を務める松本調剤薬局(松本市石芝3)の社長と模索した。行き着いたのが、同薬局の一事業として屋内水耕栽培を手掛ける「はなひらく」だった。
「屋内水耕は障がい者と相性がいいんです」と小池さん。酸素が濃く、豊富な光の下で緑に触れる作業は精神面にいい。夏の暑さや冬の寒さを避けて365日できる…。野菜のために光や温度、湿度が一定に保たれる環境が、人にとっては負担の少ない働き場となる。
「静かで緑もある」とは、定植の体験に参加した女性。一緒に作業した男性(42)も「細かい作業を慎重にやっている。楽しい」。集中する作業にやりがいがあるようだ。
女性は「自分で育てたものを食べてもらうのは自信になる」とも話した。

働き手の将来や健康管理も考え

「はなひらく」では、収穫した野菜を契約企業に直接卸すことにしている。レタスやバジル、ミズナ、サンチュなど、無農薬の葉物野菜70~100株を月2万2000円で出荷する計画だ。契約先は、小売店のほか、社員食堂に使う企業や院内食に用いる病院などを想定している。
「野菜で事業所と地域をつなげたい」と小池さん。「自分の働きで地域を支えることになる。障がい者が働く場と生きがいを持って、広い意味で健康になってくれればいい」
働き手の工賃は企業の月額契約料と同じ2万2000円を目指す。B型事業所の平均より、6000円ほど高い金額だ。将来は障がい者が技術を身に付け、「はなひらく」で水耕栽培を続けながら、企業と一般就労雇用契約を結べないかと考えている。
薬剤師の小池さんが常駐するほか、医師とも連携し、障がい者の健康管理にあたる。「農福医連携」を掲げる。
「それぞれの個性が就労で花開く」と、小池さん。11月5日午前11時には、完成お披露目会を開き、来場者に野菜を配る(数量限定)。
利用者や契約企業の募集の問い合わせは、TEL0263・87・1243、ウェブサイト=こちら=まで。