【野遊びのススメ】#39 Eバイク借りて里山登り

ソーラークッキング 太陽の恵みを体で実感

太陽の熱で調理する「ソーラークッキング」。晴天で無風といった条件が整えば、季節を問わず野遊びでも活躍しそうだ。災害時にも有用な太陽熱調理器「ソーラークッカー」を所有する小谷生活エネルギー研究所代表の新井東珠(とうしゅ)さん(47、小谷村)と一緒に、簡単な調理を体験してみた。

自然に任せ雲の動きに一喜一憂

新井さんが栂池高原で営む自転車店「小谷ファットバイクセンター」の庭で、10月21日に実践した。クッカーの市販品にはいくつかのタイプがあり、今回使ったのはパラボラアンテナ風の形状。直径は約80センチ、重さは約3キロで片手で持ち運べる。パラボラで光を反射させて中央に集める仕組みで、真ん中の五徳の上に鍋を置いて調理する。晴天時はガスコンロの弱火に相当するという。
パラボラを太陽と正対させるため、約30分ごとに太陽の動きに合わせて角度を変えると効率が良い。建物の間の風が当たりにくい場所に設置。調理に使うやかんや鍋の胴体の色は、熱を吸収しやすい黒が最適だ。
この日は晴天、午前9時の気温は約12度。太陽の光は元気に降り注いでいる。まずはお湯(500ミリリットル)を沸かしてみる。セット時の水温は12・9度。時折弱い風が吹くが45分ほどで沸騰。やかんのふたを取ると、大きな泡が確認できた。そのお湯でレモネードを作って飲む。お日さまの暖かさが体の隅々まで染み渡るよう。太陽の恵みを実感した。
続いてポップコーンに挑戦。香ばしい匂いがしてきて15分ほどで数個がはじけた。このまま順調にいくかと思いきや、太陽の辺りに雲が…。油がジュージューと音を立てていたフライパンは静かになってしまった。弱い風も出てきて、しょんぼりと空を眺める。結局、出力不足で全部ははじけなかった。
「こんな時もあります。自然エネルギーですから。『だから使えない』ではなく、うまく調和していくことが(脱炭素社会を目指す)これからの世界で大切では」と新井さん。「『続きはガスコンロで』くらいの心の余裕は必要ですね」
正午近くになると日差しが復活!気を取り直して、目玉焼きとウインナーを焼いてみた。10~15分ほどで完成し、おいしそうな焼き目も付いた。
ガスや電気を使った調理に比べれば、何倍も時間がかかるソーラークッキング。「本来の自然の営みの時間軸じゃないですかね」。新井さんの言葉に、はっとさせられた。雲の動きが気になり、頻繁に空を眺めた。こんなことは今までなかったが、自然が刻む時の流れに身を任せるのも悪くない。
新井さんは、おでんの大根の下ゆでやシチューの煮込みなどに活用しているとか。じっくりと加熱する料理に向いていそうだ。
27日に松本市の中町通りで開かれる「ホコ天×エコ展」で実演がある。