大町の休眠ホール学びの場に

シニア世代の女性有志が利活用 青木湖畔「ミューズの家」

大町市平の青木湖にほど近い場所に、10年近くほぼ使われなかった小さなホール「ミューズの家」がある。元民宿の施設の一つで、高い天井の室内は、ステンドグラスが美しいすてきな空間だ。同市大町のコミュニティースペースに集うシニア世代の女性有志はこのホールの利活用を願い、楽しい学びの会「青木湖教室」を始めた。

美術と音楽楽しく

先月9日に開かれた第1回の教室。生活に潤いをもたらす、肩肘張らない気楽な勉強会がコンセプトで、有志の知人など30人余が参加。「美術の時間」と「音楽の時間」を“受講”した。
美術の時間は、有志の一人で、インテリアコーディネーターの栗原千恵(※)子さん(80、白馬村)が、絵を飾って暮らしを楽しむためのこつを紹介。音楽の時間は、松本交響楽団のフルート奏者、郡上恭子さん(松本市)と、バイオリン奏者の山口直子さん(塩尻市)による7曲の演奏を楽しんだ。
「生演奏なんて久々」「いい時間が過ごせた」。充実した表情で会場を後にする参加者。企画、運営を担当した約10人の“おばさん仲間”も「楽しかった」と晴れ晴れとした笑顔を見せた。

林の中に静かにたたずむホールは、最大40人ほどを収容。ピアノやスクリーン、プロジェクターなどを備え、演奏会や発表会、お茶会などに最適。目を引くのは、色彩豊かな大きなステンドグラス。四季の花や鳥などがデザインされ、荘厳な雰囲気で非日常的な空間を演出している。
ホールは、大町市平の近藤朋子さん(75)の母で、民宿を営んだ天野良さん(故人)が2004年ごろ、80歳を過ぎてから、思い入れを持って建てた。映画会や演奏会を開いていたが、近くの青木湖スキー場閉鎖以降は休眠状態になった。
母の介護を機に、神奈川県から大町市に移り住んだ近藤さんは、ものづくりを楽しむコミュニティースペース「ゆいせきや」に通うようになった。仲間たちがホールの存在を知ると「このままにしておいては、もったいない」。知恵を出し合い、素晴らしいホールを大勢に知ってもらい、楽しい学びの場も開こうと動き出した。

60~80代女性 人生を豊かに

教室を開く有志約10人は、大北地域の60~80代の女性。家庭も仕事も人付き合いも経験豊富な年代。自分も含め、家族や友人、知人に各分野で活躍する人材も多い。こうした身近な人脈を生かし、この先の人生を豊かに彩る学びに励もうと、定期開催を考えている。
教室当日は、会場に花を飾り、閉会直前には景品が当たる抽選会も企画。当選者を決める場面では楽しげなBGMを歌って場を盛り上げる工夫も。「大人のお楽しみ会」のようなはつらつとした様子が印象的だった。
有志の一人は「天国にいる近藤さんのお母さまが、この様子を見てくれているはず」。近藤さんも「母は草葉の陰で喜んでいると思う」としみじみ。
ものづくりを楽しむだけでなく、集う仲間が知恵を出し、新しい動きに発展したことに、ゆいせきやを主宰する神戸千代子さん(78)は「すごいね」と驚く。メンバーの一人は「年齢は単なる数値。みんな気持ちは20歳だから」と笑う。おばさん仲間の学ぶ、楽しむ意欲が、休眠施設に明かりをともした。次回教室は来春の予定。
ホールは冬季を除き一般にも貸し出す。問い合わせは近藤さんTEL080・3455・6686

※恵、心の上にム