松本の吉澤さん 制服リユース事業立ち上げ

中古の学生服を譲りたい人と欲しい人。互いのニーズを「ココ」で「リンク」させたい─。松本市の吉澤梢さん(42)が7月、制服リユースの事業「ココ・リンク」を始めた。
「子どもの制服が小さくなって中3の途中で買い替えたの。あと半年しか着ないのに」。昨年友人から聞いた話が今年、吉澤さんにとっても現実味を帯びてきた。中2の息子は入学当時から15センチ背が伸びた。来年は最初に買った制服を着られなくなるだろう。
家庭で眠っている制服は多いはず。それを安く譲ってもらえたら ─ と思っても、橋渡しをする場が少ない。「それなら自分がその場を作ろう」と一念発起。創業の基礎知識や制服リユースのノウハウを一から学び、新たな道を歩み始めた。

成長期の負担大きなものに

新品の公立中学校の制服は、スラックスが平均約9000円、詰め襟学生服が約2万7000円。3年間の中学校生活の途中で買い替えるか悩む金額だ。
中古品を探そうにも、ネットのフリマアプリでの販売は禁止されている。近所でお下がりを譲り合うことも、学校でPTAバザーを行う機会も減った。「中古の制服を気軽に買える場所があればいい」。吉澤梢さんにそんな思いが湧いた。
入学時の制服や学用品購入の負担は大きい。さまざまな事情から、新品の制服の購入が難しい家庭もあると聞く。
「割安なリユース制服のニーズは必ずある。思い出の詰まった制服を捨てられずにいる人も、次の誰かに役立つなら ─ と譲ってくれるかもしれない。自分が間をつなぐ懸け橋になりたい」
7月から松本商工会議所主催のスクールなどに参加し、創業の基礎知識を学び始めた。さらに制服リユース業の指南役として、ネットで出会った「リクル」代表の池下奈美さん(43、金沢市)を頼った。石川県で実績を重ねる彼女を訪ね、査定方法からミシンの扱い方まで、2日間ノウハウを学んだ。
当面、松本市近郊の中学・高校の制服と体操服をメインに扱う予定。詰め襟学生服なら1点300円ほどで買い取り、新品の3分の1~10分の1程度の価格でその学校の新入生と在校生に販売する。
買い取った服は吉澤さんが丁寧に手入れをする。不織布製のたわし、綿棒などを使い、表面の毛玉やポケットの隅にたまったほこりを取り除く。最後はクリーニング店へ。専門家のケアも欠かせない。
体操服で刺繍(ししゅう)ネームがある場合は、専用の道具を使って手作業でほどく。ミシンは、裾まつりをきれいに仕上げられる「すくい縫いミシン」など、用途に合わせ3台を準備。購入者に合わせて裾上げなどをする。

環境づくりや県の普及へ力

高く販売することが目的ではない。「一着一着徹底的に手をかけ、売る人にも買う人にも付加価値を感じてほしい。自分の大切な物を、次の人が大切に使ってくれる、そんな優しい心のサイクルが生まれたらうれしい」
池下さんから、石川県では行政や学校からも、リユース制服や学用品への前向きな理解が得られていると聞いた。学校での新入生向け制服販売に「リクル」の参加も認められているという。
信州でも制服リユースに取り組む団体や企業が増えてきたが、石川県ほどは普及していない。「リユース品を当たり前に選べて、安心して制服を買える環境にしたい。私の活動がきっかけになれば」
1点から出張で買い取り(卒業後6年以内の制服・体操服に限る)、品数がそろったところで日時を限定して販売する予定。不要なランドセルも寄付品として引き取れる。提携する「塩尻ライオンズクラブ」を通じ、国内外の子どもたちに送る。ウェブサイトから。