現地在住の大場さんに聞く―カナダの教育事情は?

大北や安曇野地域で活動する女性団体「シャインマム」は10月、カナダに住む大場恵子さんから同国の教育について話を聞く座談会を安曇野市で開きました。大場さんが子育てしたアルバータ州の話や、参加者との質疑応答の一部を紹介します。

「教える」ことに徹底

大場さんは鳥取県出身。小学校や中学校で教員をした後、研究者の夫の留学に伴い渡米。長女(26)を出産し、その後カナダに渡り、子育てをしました。
「老後は夫婦で田舎暮らしを」と安曇野市への移住を希望。単身でシェアハウス高橋(同市穂高北穂高)に2カ月ほど滞在し、住み心地などを体験しました。
座談会には、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」での参加を含め、中信地区に住む幼児から高校生までの子どもを持つ母親10人が集まりました。
大場さんは、カナダの教育は州政府が管轄しているため、カリキュラムなど州によって大きく異なるとした上で、アルバータ州で自身が体験したり感じたりしたことを紹介しました。
日本の学校との違いで一番驚いたのは、先生の仕事が「教える」ことに徹底している点。日本では勉強以外の困り事や学校以外の生活面などについても、担任が相談を受けるケースがあります。しかし、「カナダでは勉強以外の悩みや相談は、それぞれの専門家が対応します。そのため親も子どもの問題を学校任せにせず、専門家とチームを組んで解決するような形を取っています」。
また、義務教育の年齢も州によって異なりますが、一般的に6、7歳から15、16歳まで。高校も授業料が無料なので大半の子どもが進学します。
「高校は全国的にレベルが平均しているため、日本のような進学校はありません。高校は日本でいう『公立中学』の感覚で入試はなし。学校を選ぶ基準は自宅から近いとか、学校を取り巻く地域や環境を考えて選んでいます」
勉強は受験のためではなく、自分が興味のある分野を見つけ深めていくことを重視。夏休みに2週間ほどキャンプ(通いも含む)に参加して、プログラミング、スポーツ、レゴなどさまざまな学びをする子どもも多いといいます。

─受験がなくてもみんな勉強をするのですか。
「OECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査による学力の国際比較(2018年、79の国・地域が参加)だと、カナダは『読解力』で6位(日本は15位)、『科学的リテラシーリー』は8位(同5位)と上位。中学・高校は必須科目の他に自分で選ぶ『選択科目』が多く、時間割も個々で違います」
「数学が得意で大学院生レベルの内容を学ぶ子もいるなど、それぞれに合った勉強を自主的に取り組む印象です」

─うちの子は毎日荷物が多く、忘れ物もしばしば。カナダの子どもはどうですか?
「公立学校は登校時の服装やかばんが自由で、体育の授業などに着る運動着なども指定のものはありません。教科書は無料で貸し出され、娘の時は宿題はオンラインで提出しました。多くの学校で給食がなく、お弁当と水筒は持参します」

─不登校の子はいますか。
「家庭を拠点に学習するホームスクーリングで勉強をさせたいため、あえて学校に通わせない親もいます。学校でも自分が選択した授業で教室が分かれるので、いつもみんなが一緒ということはありません。それぞれ自分の居場所を見つけている感じで、不登校という言葉は聞きませんでした」
「移民が多く多様な子どもたちがいることも、過ごしやすい学校生活に影響しているかもしれません。先生も個性的な授業をしています」

─うちの子は小学校に入学して学校に慣れるまで時間がかかりました。勉強以外のフォローなしでも大丈夫ですか。
「カナダは褒めて育てる文化があります。幼稚園の最高学年になると、義務教育ではありませんが小学校に併設されている『キンダーガーデン』に通います。1年間小学校と同じプログラムで動くため、学校生活に慣れやすいかもしれません」
「また、成長面で不安な場合、キンダーに2年通ってから小学校に入学させる家もありました。劣等感を持たせないようにすることを大事にしています」