花の魅力に導かれ共に歩んだ道とは

花を通じ笑顔咲く思い届ける

「花は気持ちを込めて贈るもの。その思いをくんでアレンジメントを作っていきます」
10月下旬、松本市内の中学校。キャリア教育プログラムの一環で、装花制作を通して生徒に花の仕事の魅力を伝える女性がいた。
塩尻市洗馬の太田美和さん(45)。子どもの頃から花が好きで、高校時代のアルバイトを皮切りに長年、花の仕事に携わってきた。
東京から移住し夫婦で新規就農。農業を手伝いながら花の仕事を続け、難関の国家資格「1級フラワー装飾技能士」も取得。技能検定講習会の指導員や中学校などでの職業教育、個人で注文を受けての装花制作など、活動の幅を広げている。
「人生の転機にはいつも花があった」という太田さん。その半生とライフスタイルとは。

花の仕事とは?中学校で講座も

10月下旬、松本市の山辺中学校で開かれたキャリア教育事業「地域と未来をつなぐゼミ」(県事業、運営・長野経済研究所)。木工、木曽漆器などの伝統工芸のほか、美容、プログラミングなど六つのテーマに分かれ職業体験が行われた。
教えるのは「信州ものづくりマイスター」の称号を持ち業界をけん引する、そうそうたるメンバー。この日、ピンチヒッターで「フラワー装飾」を指導したのが、1級フラワー装飾技能士資格を持つ太田美和さんだ。
県花のリンドウや、県が生産量全国一のカーネーションなど十数種の花を用意した。生徒15人は、「長野県は全国有数の花の生産地」の説明に驚きながら、太田さんの指導でドーム形の卓上花を制作。基本に従いながら、全員が個性豊かなアレンジメントを作り上げた。
「花の仕事に興味が湧いた」「自分のやりたいことで一線で活躍できるのはかっこいい」と生徒たち。太田さんは「花は感謝などの気持ちを伝えるもの。当たり前の日常に感謝し、花を通して何かを感じてもらえたら」と講座を結んだ。

東京から塩尻へ夫婦新規就農も

東京都調布市出身の太田さん。都会の住宅街で育ったが、自然や花が好きな親の影響を受け、特に花の美しさや癒やしに魅了された。高校は都立の農業高校を選び、地元の花屋でアルバイト。専門学校ではインテリア学部で花による空間演出などを学び、花店に就職。花一筋に歩んだ。
転機は2001年。夏の長期休暇中に北アルプスの山小屋でアルバイトをして、従業員だった勝さん(54)と出会い結婚した。美和さんは塩尻市に引っ越し、勝さんは山小屋の仕事を続けた。2006年、「地に足を着けたい」と、勝さんが憧れだった農業を志し、同市洗馬に家を購入。友人父母の指導を受けて夫婦で新規就農、現在は西洋野菜など13種を出荷している。
大好きな花への思いは断ち切れず、農業で腰を痛めたのもきっかけになり3年後、地元のハマ園芸に就職。山形村の店舗で働きながら、フラワー装飾技能士の1級試験にも挑戦した。限られた時間内の制作で、装花の見た目だけでなく、作業の流れや美しさなども評価される厳しい試験だが、見事合格した。
1級技能士の資格取得を機に、県の業界団体の「技能検定指導員」や職業指導などの依頼も来るようになった。現在は野菜の出荷など農業の手伝いをしながら、公での花の仕事から、個人でのアレンジメント制作までこなしている。
「流れに任せてここまで来た」と謙虚だが、人との出会いや感動が大きな推進力となった、と太田さん。コロナ禍や、昨年には勝さんの病気が発覚、「当たり前の日常が大切で、感謝すべきだと知った」。これからも大好きな花の仕事にマイペースで関わり、「みんなが笑顔になれる農家とフローリストを目指したい」。あくまで自然体だ。