八戸市の郷土玩具を作る大久保さん

故郷を離れ松本で活動続ける

かつて馬産地だった青森県八戸市に伝わる、木彫りの郷土玩具「八幡馬(やわたうま)」。土産や贈答用などに購入され、多くは十数センチくらいだ。大きいものは30センチ、7.5センチほどの小さいものもある。
八戸出身の大久保(現姓窪田)優子さん(松本市島内)は、さらに小さな3センチ、4.5センチ、6センチの八幡馬を、自宅の工房で作っている。名前は「小さい八幡馬」。
現在、八戸で八幡馬作りを担う場が二つあり、その一つで優子さんの父、直次郎さん(80)は、4代目として伝統的な手法「鉈(なた)の一刀彫」を受け継ぐ。県の伝統工芸士に認定されている。
優子さんは、故郷を離れて八幡馬の魅力を再認識。約20年前から作り手として松本で活動する。「あなたの日常に八幡馬を」をテーマに、新しい姿を模索する。

父は伝統工芸士 制作環境身近に

大久保優子さんは子どもの頃、父の直次郎さんが八幡馬を作る自宅の作業部屋へ遊びに行くのが好きだった。作業で出た面白い形の木片をコレクションしていたという。青森県の歴史ある伝統工芸品を作る父は、国内外の人との交流も多く、誇らしかった。
大きくなるにつれ、八幡馬への興味が薄れていった優子さんは、大学進学で関東へ。東京で就職し、結婚した。ある時、夫の窪田耕介さんに「こんなにかっこいい八幡馬をなんで作らないの?」と尋ねられ、心にぽっと火が付いた。八幡馬を作りたいという思いを胸に、夫の転職を機に松本市へ移住。27歳で県松本技術専門校(同市寿北7)の木材工芸科(当時)に入学、木工の基礎を学んだ。会社を辞めた約10年前から本格的に制作する。
昔から父の作る姿を見てきたため、作る手順は大方頭に入っていたが、時には父に教えを請うた。大きいサイズを好む父に対して、自分は小さいものを専門にしようと決め、もっぱら電動糸のこぎりと彫刻刀を使う。
「鉈(なた)で同じ形を作り続けられる父の技術の高さを実感。本当にすごい職人だと思う」

作り手の活動が不可欠の要素に

約700年の歴史があるといわれる八幡馬は、旧暦8月14~16日に行われる八戸の櫛引(くしひき)八幡宮の例大祭で、参詣者の土産品として販売されてきた。幼少の頃は毎年出店する父に付いて行った。自身が作り手となってからは、妊娠・出産の2年を除いて毎年出店してきたが、コロナ禍で3年連続中止に。自分を見失うほど落ち込んだ。「今や八幡馬なしに自分を語れなくなっていることに、気が付きました」
八幡馬を身に着けてほしいと、根付けにして商品化した。たてがみや尻尾には通常、麻を使うが、水引も試してみた。八幡馬と羽根、あるいは額の中で八幡馬と絵を組み合わせてみたい。父の技術のすごさや八幡馬の魅力を、インターネットなどを通じて世界にも発信したい。そして、いずれは鉈の一刀彫の手法を受け継ぎたい-。
父が作り続けてくれたおかげで、自分も作れることに感謝しながら、優子さんの夢が膨らむ。

【小さい八幡馬】優子さんの八幡馬は櫛引八幡宮をはじめ、松本市蟻ケ崎1の「洋裁と愉(たの)しみ多多(たた)」(TEL50・7812)、通販サイト「WEB八戸朝市通販」(https://ukipal.jp/web_asaichi)などで販売している。