優雅な文字表現〝カリグラフィー〟沖さん作品展

握ったペン先から自在に生み出す、優雅な文字や立体感あふれる文字。「カリグラフィー」の作家・講師の沖寿枝(としえ)さん(59、松本市寿南)が29日まで、「額縁のタカハシ」(同市出川)で個展を開いている。12月1~6日は同所で、塩尻市の講座などで学ぶ、沖さんの生徒らが作品展を開く予定だ。
「カリグラフィー」とは金属やフェルトのペンで、水彩紙などにアルファベットを美しく書く手法だ。文字の傾斜や高さが書体ごとに定められ、ペン先の角度を保ち線の太さを書き分ける。ガイドラインは引くが、下書きはしない。集中力が必要で「自分を試すような感覚が楽しい」と沖さん。思いのこもった作品が出来上がる。
普及に向けた活動などを沖さんに聞いた。

技術を磨き講師として活動

沖寿枝さんとカリグラフィーとの出合いは、東京で暮らしていた28年前。息子が通う幼稚園から転園する子に贈るため、クラスメートの母親がカリグラフィーで書いたカードを見て心を奪われた。「こんなにすてきなカードをもらったら、園での思い出もきっと色あせないだろう」。彼女から「独学は難しいから習いに行くといい」と聞き、NHK文化センター(練馬区)で学び始めた。
カリグラフィーの起源は、ローマ時代の石碑に刻まれた文字「ローマンキャピタル体」であるといわれ、現代でもなじみ深いアルファベットのブロック体に通じる。「歴史を知ったり、書き方のルールは守りながらも自分らしく文字を表現できたりすると、どんどん面白くなった」
魅了された沖さんは、カリグラフィーの第一人者である松井康子さんからも学び、2002年には高い技術を持つ人たちが集まる団体「カリグラファーズ・ギルド」の会員に。15年には「AJCクリエイターズコンテスト」カリグラフィーアート部門で特別奨励賞を受賞した。
松本に移り、02年から県内各地で講師を務める。ここ数年は親の介護をしながら活動。自宅で受講生の作品を添削するなど、目の前のことをこなすだけで精いっぱいだった。
昨年、介護を終え、新たな目標を立てた。「カリグラフィーは県内であまり知られていない。もっと多くの人に知ってほしい」。自身と、塩尻市民カルチャーセンター講座などの受講生による展覧会開催は、その第一歩だ。
受講生にとって、ギャラリーでの展示は初めて。ジュエリー職人として活躍する受講生は、カリグラフィーの技術をジュエリーや時計への刻印に生かした。始めて2年目の人は、好きなハートのモチーフを取り入れた作品を楽しみながら作った。一人一人がこれ以上ないほどに手をかけた自信作ばかりだ。
カリグラフィーは季節のカード、ご祝儀袋など、生活に彩りを添えるだけでなく、ボタニカルアートや日本の毛筆書道、ペーパークイリング(細長い紙を巻いて作る装飾)など、さまざまなアートと組み合わさって、双方の魅力を引き立て合う。「オリジナリティーあふれる作品を見てほしい」
午前10時~午後6時(個展・作品展とも最終日は正午まで)。入場無料。沖さん(インスタグラム)。塩尻市民カルチャーセンターの講座は現在定員いっぱい。