自作朗読家・尾崎さん 作品を声で届け半世紀

心を錬磨して伝える“朗読道”

穏やかな語りで紡がれる言葉の数々。詩、創作童話など、情感豊かな朗読を聞いているうちに、絵本を開いているような世界が広がっていく─。
自作朗読家の尾崎美千代さん(70、安曇野市穗高)が活動を始めて50年になる。音楽家とコラボレーションする朗読コンサートや、単独のコンサートをはじめ、朗読を学ぶ人への個別指導やシニア大学の講師まで、さまざまな形で朗読の楽しさを発信している。
17歳で詩を書き始め、20歳から本格的に朗読を始めた。こだわるのは自身の作品を自分の声で伝えること。その時々に感じたことを朗読で届け、社会に問いかけている。
もう一つのライフワークは油彩画。朗読会場に飾ったり教えたりしている。朗読、創作と共に半世紀を歩む尾崎さんを訪ねた。

亡き夫のために 変わらない心で

梓川アカデミア館(松本市梓川倭)のギャラリーで6日、尾崎美千代さんが自作の詩や童話を朗読するコンサートが開かれた。南米の民族楽器・サンポーニャの音色と共に届ける言葉は時に優しく、時に強く、聞く人の心に響く。
この日のテーマは「平和」。学校でのいじめ、世界で起きる戦争など、さまざまな場所で起きることから「平和とは」と問いかけた。
約100人が聞き入った。親子3人で訪れた上原沙織さん(44、安曇野市穗高有明)は「目をつぶって聞いていると風景が浮かんでくる」とし、いじめがテーマの物語には「勇気を出して言えるということはすごいことだと思った」と話した。
安曇野市出身の尾崎さんは、幼い頃から“うれしいことはとことん感激し、悲しいことはいつまでも悲しい”という感受性の持ち主だった。詩や童話が自然に生まれてきた。招待された結婚式で自作詩を読むなど本格的に朗読を始めた。
中学校教諭となり、23歳の時、同じ中学校で出会った夫・義弘さん(享年47歳)と結婚。1男1女を授かった。子育てをしながら朗読コンサートに取り組み、小さな古民家から1800人が満席になった公共ホールまで、さまざまな場所で自作を読んだ。
20年ほどたった頃、がんを患った義弘さんが逝去。「親友であり尊敬する最高の相手を亡くし、ここまで底辺があるかというくらい、つらかった」と振り返る。
朗読を続ける意味や生き方を自問自答。生きたくても生きられなかった義弘さんのためにも、変わらない心でいようと決心。子どもたちも背中を押してくれた。

自分のやり方で絵画にも夢中に

尾崎さんの描く風景画は特有の透明感と温かみがある。油絵用の太筆でなく水彩画用の細筆を使っている。油絵を描いていた義弘さんに誘われ、結婚後に始めた。
技法にこだわらず、好きなように描けばいい─という義弘さんの言葉に「自分のやり方で描けるのがうれしくて夢中になった。絵は生活そのもの」。朗読コンサート会場に演出の一部として飾るほか、教室も20年以上続けている。

童話や詩はこれまで100作品以上を書き、著書も8冊出版した。70歳になり「人生最後のステージの出発点に立てたようで、とてもうれしい」と充実感をにじませる。
「朗読は『朗読道』。心を錬磨していかないと聞き手にうまく伝わらない」。腹式呼吸による発声や読み方の“間”などを大切にし、「聞いた人に喜んでもらうのが張り合い。周囲に感謝し、100歳までコンサートを続けるのが目標」とほほ笑む。