紅葉から冬木立へ 信越国境ブナ林24時

間近に迫る冬将軍の到来を前に、朝日を浴びてワインレッドに沸き立つブナ林(10月31日午前7時15分、信越トレイル沿いから)

新潟(越後)との県境で、JRの駅で日本最高積雪地点(7.85メートル=森宮野原駅)の記録もある豪雪地、栄村。ライフワークの「信州のカノープス」最北端の撮影に挑み、10月下旬から11月10日まで、北緯37度の野々海(ののみ)高原を頻繁に訪れた。その間、紅葉から冬木立へと足早に表情を変えるブナ原生林にも目を奪われ、車中泊しながらカメラで追った。

見慣れたブナ林も霧に包まれると表情が一変、幻想的な日本画を連想させる(11月3日午前8時41分、野々海池付近)

【沸き立つ広大なブナ林の紅葉】
10月26日、野々海池周辺。広大な面積を同系色で彩るブナ林の紅葉が最盛期を迎え、山全体がワインレッドに染まった。朝日や夕日を浴びると、光彩を際立たせ沸き立つ。
植物の群生が移り変わり、最終段階に達した群落を「極相」という。日本の多雪地域の極相林のほとんどがブナ林といわれ、その鮮やかな紅葉に見とれる。県境に沿って整備された山歩きルート「信越トレイル」を歩きながら、紅葉のブナ林で森林浴を楽しむのもよい。
【強風の一夜で冬木立に変身】
31日夜半、天気が急変。予想外の強風にあおられ、枝を大きく揺らすブナ林が、ひゅうひゅうと音を立てて泣く。栗のいがに当たる殻斗(かくと)が、ばらばらと落ちた。
夜が明けて驚いた。車道は落ち葉のじゅうたんになり、ブナは葉をほとんど落とし、一斉に冬木立に変わった。葉が付いた状態で雪をまとうと、重みで枝が折れ、幹が裂ける。これも間近に迫った冬将軍に耐える、ブナの知恵だろうか?冬木立を見上げていると、ブナの気持ちが伝わって来るような朝だった。

11月1日未明にかけて前夜から強風が吹き荒れ、一晩でほとんどの葉が散り、冬木立のブナ林に変わった(午前9時41分、信越トレイル沿い)


【ぴったり寄り添う大木「夫婦(めおと)ブナ」】
野々海高原に向かう南斜面の道路沿い。2本がぴたりと寄り添い、抱き合うブナの大木が目を引く。向かって右側の胸高直径は約1・25メートル、左側は約1メートル。すくっと伸びた幹の上部で、右側が左側を支えている。「夫婦ブナだ!」。地元の人や村観光協会に問い合わせても、知らない人が多い。眺めていると、ほほ笑ましい物語が浮かんできそうだ。
【生への執念「ど根性ブナ」】
深坂(みさか)峠と三方岳間の信越トレイルを歩くと、動物の姿を連想させる、奇妙な形状のブナの幹に出合った。全国有数の豪雪に耐え、地面近くをはう姿は、生への執念が形作った、「天然記念物」のように映った。
(丸山祥司)


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