【記者兼農家のUターンto農】#81 年の瀬の酪農(上)

牛乳の価格高騰の理由

年末にかけて、牛乳が余りそうだという。生産者団体は12月下旬に、消費を呼びかける街頭活動を計画している。
去年も同じようなニュースがあった。例年、年末年始は学校給食がなく、一部スーパーも休みになって消費が落ち込む。そこに昨年はコロナ禍が重なった。人の飲む量が減ったとしても、牛の乳を作る量は減らない。搾ってあげないと病気になってしまう。
去年は、国を挙げての呼びかけもあって、牛乳の大量廃棄という事態は避けられた。だが、今年は去年よりも余るかもしれないという。11月に牛乳が値上げされて、すでに5%ほど消費が減っているからだ。
「消費者が値上げに納得していない。理由が伝わっていないのでは」と懸念するのは、松本市波田で「三村牧場」を営む三村誠一さんだ。中信や南信の酪農家40戸ほどでつくる「南信酪農業協同組合」の組合長でもある。
生産者から乳業メーカーに卸す生乳は、11月に1キロ当たり10円上がった。1割弱の大幅値上げだが、生産者側は15円を求めていたという。それだけ酪農経営が苦しくなっているからだ。主な理由は、飼料代が膨らんだことだという。
牛の餌は大部分を輸入に頼っている。その価格がこの半年くらいで3割高くなった。ウクライナ戦争による世界的な品薄に、円安が重なったためだ。200頭以上を飼う三村さんの場合、年に千万円単位のコスト増を覚悟しないとならない。乳価が10円上がっても「焼け石に水」の感の酪農家は多いという。
生産コストが売値に転嫁できないとか、消費者に理解されないといった心配は、米や野菜の農家も同じだ。私たちの場合は、肥料高騰だ。農協の示す価格表を見ながら、父は「高くなったな」とこぼすばかりだ。
牛乳に関しては、私は消費者の立場になる。何ができるだろうかと、三村さんの話を聞いて考えている。