【記者兼農家のUターンto農】#82 年の瀬の酪農(下)

牛乳の「製造所」が気になる

スーパーで乳製品の表示欄を確かめるようになった。注目するのは「製造所所在地」や「製造者」。県内、中でも松本平であれば迷いはない。「値段は二の次」と自分に言い聞かせる。
南信酪農業協同組合(松本市)の組合長、三村誠一さんの言葉が耳に残っているのだ。「地元で責任を持って作っている」
前回、酪農家の経営が飼料代の急騰で厳しくなっていることを紹介した。11月の値上げでも、大勢は変わらないという。
消費者にすることはないか。「できることなら地産地消を」と三村さんは言った。
乳を牛から搾って運び、製品にして店頭に並べるまでの日数を考えれば、近くの製造所のものの方が新鮮で、おいしいはず。地元産を使うことがいい食生活につながるとアピールするのは、野菜と同じだ。
ただ、生産物の多くが大都市圏に運ばれる野菜とは逆に、三村さんによると、同組合の酪農家から出荷される生乳の多くは地元の製造所に向かうという。全国的な消費動向よりむしろ、この地域で作られる乳製品の売れ行きの方が大事。そんな「地元頼み」の構造とは知らなかった。
そして、地元産は減っている。中信と南信をカバーする同組合では、この10年で生乳の生産者は、80軒余りから半減した。量は、年間約2万トンから4分の3ほどに減った。
1軒当たりの生産量は増えている。集約化にはいい面もあるのでは。そんな考えも浮かんだが、「仲間が減るのはね」と三村さん。「地元で酪農の存在感がなくなると、行政に声が届かなくなる」
うちの周りからレタス類の農家がなくなる状況を想像してみた。うちの生産がどうなろうと放っておかれるという心配も大げさではない。
身につまされて、牛乳パックの表示欄をまじまじと見るようになった次第。地元産が新鮮なことも改めて理解できたし。
年の瀬、いよいよ寒くなってきた。ミルク鍋であったまるという手もあるな。