農民美術の達人 山本悦市の足跡一冊に

県民藝協会会員の竹下賢一さん(71、松本市庄内2)が、「青木村農民美術最後の達人・山本悦市」を自費出版した。竹下さんの祖父で、「木片(こっぱ)人形」の生産者として活躍した山本悦市(1884~1978年)の足跡と、青木村農民美術の盛衰をまとめた。
版画家で洋画家の山本鼎(かなえ)(1882~1946年)が神川村(現上田市)を拠点に提唱した農民美術運動は、農閑期に木彫りの人形や皿を作り、農家の生活を安定させようとした取り組み。大正時代後半に全国へ広がったが、太平洋戦争によって衰退したという。
著書からは、その激動の時代を背景に、山本悦市ら青木村の若者が手仕事を生活の糧にすると同時に、楽しみや生きがいにしていたことがうかがわれる。
竹下さんにとって「木彫りをするおじいちゃん」だった山本悦市。農民美術に関わっていたことを知ったのを機に、文献や当時の新聞を取り寄せるなど取材は4年間にわたった。自身のルーツを知ることにもつながり、充実した時間だったという。
2011年の「丸山太郎美しいものが美しい」に続く2作目。竹下さんは自宅に飾る祖父の「スケート人形」に優しいまなざしを向け、「青木村農民美術を知ってもらい、物づくりの楽しさや大切さを伝えられたらうれしい」と話した。
A5判、30ページ、非売品(貸し出し可)。松本市内の図書館に寄贈予定。