【中村小太郎・駆け出し百姓の自然農奮闘記】#43 ケヤキ切るばか

「桜切るばか、梅切らぬばか、柿折らぬばか」と言います。桜は幹や枝を切るとその部分が衰弱してしまうが、梅は余計な枝を切らないと良い花芽がつかなくなる。柿は実をちゃんと取ると枝が折れて来年の備えになる。樹木のせん定にはその特質を見極めよ―との戒めにも似た言い伝えです。
中国の故事にも似たようなものがあるようで、「欅(けやき)切るばか」です。満洲から引き揚げてきた義理の母から聞いた教えです。この場合は、せん定というよりも伐採のことでしょうか。この時期、落ち葉が道に散乱し、掃除が大変で切っちゃう人がいたのでしょう。
わが家も先祖代々の大きな欅が3本元気です。義母の伝える通り、大事にしています。掃除は大変です…。
夏には苛烈な太陽光をさえぎり、地表の乾燥を防いでくれます。秋には紅葉の素晴らしいグラデーションで目の保養になります。
そして、なんといっても冬の落葉。動物が冬眠をすることになぞらえる人もいます。乾燥から自身を守るためなのですね。くる日もくる日も、葉が「自然農園なかむら」の畑に降り積もります。欅の葉は小さく薄いので、冬の間に天然の腐葉土状態になります。目に鮮やかな新芽の頃には、歩くとふかふかです。欅は自身の根を張る地面の状態を良くするためにも落葉させるのでしょうか。
この畑の野菜は、その恩恵かどれもとてもよくなります。そして、とてもおいしいです。