大ベテラン2人 年の瀬に技伝承「正月飾り」教え30年

赤津さん(左)と塩原さん

今年もこの時期がやってきた。暮れが迫ると、しめ縄など、正月飾りの作り方を教えてきた。ともに塩尻市広丘吉田の赤津勝次さん(78)と塩原孝壽さん(69)だ。地区の公民館活動の講習会で、1990年代半ばから、30年弱にわたり講師役を務めている。「やらないと寂しいね」と語る2人の生き生きとした年の瀬だ。
11日、同市の吉田地区センター。約20人の老若男女が稲わらを手でなっていた。
「先生、ちょっと」。呼びかけられて、塩原さんが男性の元へ。縄を長くするのに、わらの継ぎ足し方を尋ねられた。「悩むところだよ」と応じ、こつを伝えると、男性は「そういうことか」と納得顔で作業に戻った。
赤津さんは、別の男性に神棚用のしめ縄作りについて請われた。作りかけを見て、笑顔で「もっと豪快にやった方がいいよ」。わらの本数を増やして太くした。出来上がると、「これは立派だ」と男性は満足げ。
優しげな塩原さんと、はきはきした赤津さん。ともに「上等、上等」「十分だよ」と褒め上手。和気あいあいと講習会は進んだ。
中学2年の武井智菜さん(14)は、小学1年の頃から毎年習っている。「教え方がうまくて、分かりやすい」と2人を信頼する。

農家でもある赤津さん。もともと手先が器用で、手仕事が好きだった。米俵やみそ俵、みのなどの作り方を周りの大人に教わった。「昔はそこら中に年寄りがいたから」と振り返る。塩原さんは農家ではなかったが、わら細工好きだった父親から技術を受け継いだ。
今では、大ベテランの2人。地元の神社のしめ縄作りにも携わっている。
「人に教えるのは難しい」と言いつつ、工夫を重ねる。餅などを入れる「オヤス(オチョコ)」の作り方は、図解を自作した。しめ縄から垂らすシデは、型紙を作った。きれいに見えるように、斜めに切れ込みを入れるのが特徴だ。
「派手なのは作れないけど、一年の風習だから。人の役に立てばいい」と赤津さん。
今やスーパーなどで多様な正月飾りが買える。それでも、「都会と違って田舎はわらが手に入る。自分でやってもいいのでは」と塩原さん。「一人でも作っていきたいという人がいれば、お手伝いしたい」
講習会の終わり、地区の公民館長から「来年もよろしくお願いね」と声をかけられた。