小谷に“いいもの”並ぶ雑貨店

こだわるのは作り手にじかに会うこと、使い手に伝えること。日用品と暮らしの道具を扱う店が今秋、小谷村中土にオープンした。
石原地区の築150年近い土蔵を改修し、増富康亮(ますとみこうすけ)さん(42)、永子さん(47)夫妻が開いた店の名は「紡ぎ舎(や)」。食器やカトラリー、調理道具、タオルやせっけん、調味料など国内各地で作られた“いいもの”が並ぶ。
気になる商品の前で立ち止まると、産地や素材、使いやすさ、開発の苦労など、製作現場を見たかのように説明してくれる。その通り、扱う商品は二人が使って気に入り、実際に作り手に会って仕入れたものだけ。「使う人のことを考え、繊細に作られた日本のものづくりを伝えたい」。海外生活も経験して実感した思いとは―。

日本のものづくり支えたい

ナチュラルな雰囲気の籠バッグ。「コウゾの皮で編んでいます」と話すのは、紡ぎ舎代表の増富康亮さん。「山ブドウのつるのバッグより軽く、すごく丈夫。作り手は栃木県益子町の奥村草作さん。奥さんの紗希さんはコウゾを原料に和紙をすいています」
ジュエリー作家でもある竹俣勇壱さん(金沢市)が手掛ける、洗練されたデザインのスプーンやフォーク。先端が大きく重く、柄が細くてきゃしゃだ。「持ちにくいと程よい緊張感が生まれ、使う人の所作が美しくなるだろうというのが、このシリーズです」。素材や使用感、作り手の背景、製品に込めた知られざる配慮…。聞くほどに面白く、製品を見る目が変わる。
インターネットで簡単に情報が得られる昨今だが、ものづくりの背景にある物語や作り手の顔が見える―といった観点から商品を選ぶ人も増えている。「お客さまにきちんと魅力や背景を伝えたい。そもそもわれわれが知りたい」と康亮さん。
気になる品は、まず客として買い求めて使ってみる。魅力を感じて扱いたいと思えば、必ず作り手を訪ねて直接話を聞き、可能なら製造現場を見せてもらう。労を惜しまずこの過程を繰り返し、店にいいものが増えていく。これまでに本州、四国、九州の各地を回り、現在は約40の個人や会社などの商品を扱う。

康亮さんは小谷村出身。大学進学で故郷を離れ、大学院時代や勤務でフランス、英国、米国に滞在した。埼玉県出身の永子さんは語学留学などで米国等に渡った。二人でオーストラリアで暮らした時期もある。海外の生活で、日本のものづくりや食が素晴らしく、いかに使う人への気配りにあふれているかを実感した。
康亮さんは、40歳になる節目で長年勤めた銀行を退職し、帰郷。国内外のいいものを紹介する仕事を考えていた頃、コロナ禍に。そんな中、まずは日本のものづくりの現場を訪ね始めた。
作り手に会い、熱意やこだわり、製品への愛情に触れると、商品選びが正しいという確証を得られる。一方で、後継者や原材料不足といった産地が直面する課題も見えた。
縁の下の力持ちとして、人を支える仕事にやりがいを感じていた康亮さん。「店から情報を発信し、いろんな人に現状を知ってもらうなど、作り手をサポートできることがあるのでは」と考えた。
店舗開設に先んじて、2021年からオンライン販売を始めた。「日本の伝統的なものづくりを単に保存したいのではない。道具は『使われてなんぼ』。いいものを今の時代にちゃんと使い、活用して時代に合った形にして引き継ぎたい」。解体寸前だった古い土蔵に手を入れて開いた店舗は、そんな思いを象徴した建物だ。「地元の人は当たり前だと思っているが、小谷にはいろんな魅力がある。アクセスが悪くても、魅力があれば人は来てくれます」と永子さん。店は冬期間も営業する。
3月までは午前11時~午後4時。水、木曜定休。年内は28日まで、年始は2日から営業。詳細はインスタグラム=こちら=で。TEL050・3718・2301