地域通貨 ACpay 「共感」基に循環を

2020年から松本地域で運用が始まったデジタル通貨「アルプスシティ・ペイ=ACpay」。「贈るように払おう」を合言葉に、スマートフォン決済の地域通貨に、満足度や共感をギフト(寄付)として上乗せする機能を追加。「共感」を基に資金が循環する持続可能な経済社会を目指す。期限が切れた通貨の再配分で地域課題の解決も図る、実験的な試みだ。
コロナ禍で普及が遅れたが、昨秋、松本市内でフォーラムを開き、活用法を考えた。今年は、決済機能だけではない通貨の理念が注目され、中部山岳国立公園活性化プロジェクトの支払いツールとしても検討されている。
事務局のACpayコミュニティーマネジャー、山本達也さんに聞いた。

地元に還元し地域の店を応援

─デジタル地域通貨アルプスシティ・ペイ(ACpay)には、どんな特徴があるのか。
山本達也地域内でお金をプールし循環させる目的の地域通貨と、デジタルの良い部分をかけ合わせ、「地域共通の大きい財布」として運用、地元に還元しようという理念が新しいと思います。
地域通貨を媒介に自立分散型の「共感資本社会」を目指す、eumo(ユーモ、東京)のシステムを利用。サービスや商品に対する感謝を表す「ギフト(寄付)」や「メッセージ」機能を付加し、代金だけでない価値を伝えたり、好きなお店を応援したりできるのが最大の特長です。こうした「ギフトエコノミー」はドイツが先進で、世界的な潮流にもなりつつあります。
─なぜ松本エリアで地域通貨なのか。
山本松本は自然と都市機能が近く、うまく融合していて、人口規模的にも新しい都市デザインの可能性がある。人口減少時代に、公や民(企業)が担えない市民社会の課題解決や資金調達を、「共助」で回していくことは、喫緊の課題です。経済合理性だけでないカルチャー、人とのつながりや信頼で店を応援し支え合う仕組みにも引かれました。
─3カ月で通貨が失効する意味とは。
山本お金の保存(貯蓄)機能が資本主義のゆがみを生み出すとの観点から、それを循環させます。ACpayでは期限切れの7割をユーザーに還元、3割を地域活動に寄付します。例えば、北海道ニセコ町(NISEKOeumo)は、その全額を子どもの教育のチャレンジ資金に活用しています。松本ではその使い方を皆で議論することも「共助」の一環で大切と考えます。

環境の保護など新たな可能性も

─昨秋、イベントを開催した。成果は。
山本延べ150人以上が参加、思った以上の手応えがありました。ACpayをイベント内全ての場面で使えるようにし、共感による値付けや「投げ銭」、環境保護活動に協力した参加者への「逆ギフト」など、新しいアイデアも実践され、可能性を再認識しました。
─今年の新たな展開や方向性は。
山本環境省と周辺自治体による、中部山岳国立公園活性化のプロジェクト内で、ACpayを利用してもらえたらとの方向で働きかけています。環境の保護や活用を考える時、従来型の等価交換の支払いでなく、ギフトエコノミーの視点が役に立つのではと思っています。デジタルデータは解析し今後に役立てることができるし、行政区にとらわれない、まさにコミュニティー通貨として、地域の関係人口の増加やファンづくりにもつながれば。
現在21店にとどまっている加盟店の拡大も課題です。地域でビジネスをし、それによって地域を良くしたいと考えるお店に呼びかけたい。加盟店とタイアップしたイベントも企画したいです。
(文中敬称略)

山本 達也さん(やまもと・たつや)
東京都出身、慶応大大学院修了。清泉女子大地球市民学科教授。専門は、技術と社会変動に関する政治と政策。研究実践のフィールドとして10年前から松本に拠点を移し、東京、海外を行き来する。