大町「ゆずり葉の会」高齢者へおせち

食べてくれる人がいて輝ける

「ここ、こぶ(昆布巻き)がないよ」「干し柿お願いね」
昨年12月30日の午前9時すぎ。大町市常盤にある上一基幹センターでは、かっぽう着姿の女性たちがせわしなく動き、約100人分のおせち料理を彩りよく盛り付けていた。常盤地区の1人暮らしの高齢者らへ届けるため、上一のボランティアグループ「ゆずり葉の会」が、30年近く続ける年末恒例の光景だ。
ブリの煮付け、紅白なます、田作り、煮しめ、つくねなど25種類ほどの料理は、ほとんどが手作り。年の瀬に4日かけ作る心づくしのおせちを、毎年心待ちにする人がいる。
会は、地域の高齢者の交流や居場所づくりを年間通じて計画し、支え合いや見守りにつなげてきた。40人の会員の中心は70、80代となったが、息の長い活動が続く。原動力は何だろう。

仲間と楽しんで 特製おせち作り

大町市常盤地区内の希望があった1人暮らし高齢者らへ届けられる、ボランティアグループ「ゆずり葉の会」の手作りおせち料理。会員の家でとれた野菜なども使った手の込んだ品々で、見栄えよく盛り付ける。昆布巻きの中身は、高齢者にも食べやすいシシャモにした。常緑の松葉を刺した黄金色のギンナンは、調理場のある上一基幹センター駐車場のイチョウの木のものだ。「松葉がふにゃふにゃしてるから、なかなか穴に通らないだよ」と苦労話が飛び出すが、みんなの表情は明るい。
折り箱には、西澤純子会長(77)が記した手紙が添えられた。例年、この1年の時勢や流行も盛り込んだ楽しい文面で、今回は「ん」が付く食べ物を紹介し、「お届けした中にいくつの『運』が見つかるかな?」とつづった。特製おせちは民生児童委員が希望者宅へ届けた。費用は、社会福祉協議会からの助成や注文者の一部負担などを充てた。
4日にわたるおせち作りを終えた会員たちはほっとした様子だが、「午後から、うちのおせちの買い出しに」と忙しい。1991年の発足当初から活動する藤巻智子さん(83)は、「仲間との作業は楽しく、地域や人のためになっていることが生きがい、張り合い」と笑顔だった。

地域思う気持ち メンバー一丸で

ゆずり葉の会は、上一地区の高齢者に向けた活動が主だ。おはぎや赤飯、七夕おやき、手打ちそばなどを手作りし、会食したり交流したりする機会を季節ごとに設ける。食事の後には歌や落語、健康講話などのお楽しみや情報を得る時間も。準備や調理、出演者の交渉まで、全てを会が担う。おせち作りは、希望を受けて上一地区を含む常盤地区全体の高齢者にまで、対象を広げてきた。催しはコロナ下でも工夫して続けている。
会は、市立大町総合病院の総婦長を務めた川上喜代子さんが中心となり、「住んでよかったと思える地域づくり」を掲げ地元で賛同者を募って発足した。ところが、程なくして川上さんが急逝。早期から地域福祉の必要性を見据えて活動してきた遺志を継ごうと、メンバーが盛り上げて会は存続した。川上さんのおいで常盤地区社会福祉協議会の会長、川上満さん(73)は「チームワークよく続いていて、すごい」とたたえる。
年末に、家のことを後回しにしてもおせち作りに精を出すメンバーたち。「当たり前に思って集まってくれる、気持ちのある人たち」(西澤会長)だ。参加した人、食べた人からの感謝の声はもちろん、活動の大きな励みになる。西澤会長は迷わず話す。「『来てよかった、また食べたい』という言葉が原動力。会に来てくれる人、食べてくれる人がいるから、私たちも輝ける」。地域を見つめ人を思う気持ちが、今年も温かく地元を包む。