信州の味 古民家の宿で提供

人の記憶に残る仕事をしたい

そばと料理でおもてなし─。2月3日、松本市中央2に古民家を使った宿「三引屋(みつびきや)」がオープンする。店主の和田祐太郎さん(34)が長年の夢を形にし、情熱を注ぎ込んだ。
和田さんは料理の専門学校を卒業し、東京や横浜の店で修業。2016年には東京で、そば割烹(かっぽう)の店を開いた。常連らに愛されたが、新型コロナ禍が今後を模索するきっかけとなった。愛着のある店を閉め、妻の絵美さん(35)の故郷松本で、宿を開くことにした。
「古いものはなくしたら二度と戻らない」と、古民家をリノベーションし、海と山の物を織り交ぜた「信州ならでは」の料理を提供する。態勢が整えばランチ、ディナーなど、食事だけの提供も考えている。地元の人にも愛される店を目指す。

そば割烹の店畳んで松本に

アワビの茶わん蒸し、白菜のすり流し、タイの土鍋ご飯、鹿肉の煮込み、そして手打ちそば─。昨年12月末から今月にかけ、「三(みつ)引屋(びきや)」をプレオープンした際、店主の和田祐太郎さんが振る舞った料理の一部だ。訪れたのは、東京で開いていたそば割烹の店「木の花」の常連約20人だ。
和田さんは横浜市出身。父が長野市出身で、趣味はそば打ちといい、子どもの頃からそばは常に身近にあった。料理の専門学校卒業後は、横浜市のそば懐石の店「九つ井(いど)」で修業、そば打ちを任せてもらえるまでになった。
その後は、東京の日本酒居酒屋「件(くだん)」でさらに腕を磨き、店を開く勉強もした。宿を開く際、連泊するケースを考え、イタリアンを勉強したり、白骨温泉(松本市安曇)の旅館で働いたりした。
「宿を開きたい」という気持ちは、子どもの頃の体験が核になっている。「夏休みになると、毎年家族で能登島(石川県)のペンションに出かけ、すごくいい思い出をたくさんもらった。人の記憶に残る仕事ができたら、すてきだなと思った」
宿は初期投資がかかりハードルが高いと考え、2016年、東京に「木の花」を開いた。和田さんの料理とセレクトした日本酒、店の雰囲気などにほれ込み、常連客も増えた。そのまま続ける選択肢もあったが、新型コロナが「東京で飲食店をやり続けること」を考え直すきっかけになった。妻の絵美さんの仕事がリモートでできるようになったことも、背中を押した。
店を畳むことに寂しさはあったが、「松本に行きたい」思いが強かった。6歳と4歳の娘の子育ても、妻の両親にサポートしてもらえるため、「仕事に専念できる」。東京の常連客も気持ちよく送り出してくれた。

古さと新しさ 古民家の魅力

「三引屋」の由来は、和田さんの家紋「丸に三引両」から。古民家に興味があったといい、旧城下、小池町の建物を選んだ。「増築を繰り返し、1855(安政2)年~昭和中期の建築の特徴が随所に見られる。新しくきれいな部分、手を入れて生かした古い部分が混在するところに面白さ、味があるのでは」と和田さん。
「思い出に残る場所にしたい。おいしい料理、宿はその一部だと思っている。『また来たいね』と思ってもらえたら。地元の人にも料理を提供したい」。2月3日、和田さんは信州で新しい一歩を踏み出す。
専用トイレが付いた部屋など4室。1泊2食付きで、1万3000円~。夜の食事のみ希望は事前に相談を。TEL0263・88・5106