とある高校の先生から、「課題を出すように何度言っても提出できない。怠けと障害の区別はどう付けたらいいのですか?」と聞かれました。
怠けと障害の区別を付けるということ自体、私にはよく分かりませんが、一見「怠け」に見える状態の背景にどのような事情があり得るかを考えてみましょう。
得意、不得意の差が大きく、ある課題は難なくできても、ある課題は能力的に難しく手が付けられないということもあります。やり方が分からなくて途方に暮れているのかもしれません。
複数の教科から課題がさみだれ式に出されると、それぞれの期日までに優先順位を付けて順番にやりこなすということがとても苦手で、結局どれも手付かずのままたまってしまうというようなこともあります。
学校内外のことでストレスがたまり抑うつ的になっていて、努力系の課題をやりこなすだけのエネルギーが残っていないということがあるのかもしれません。
また、課題をやらないと単位が取れず進級できないという仕組みにピンときておらず、そこまで危機感を持てないでいることもあります。
長年、叱られることに慣れてしまい、叱責(しっせき)を“スルー”することで生き延びてきたお子さんだと、厳しく叱ると内容がかえって本人に届かないということもあります。
これまで、頑張ってもうまくいかないという経験を重ねてきて、「どうせ何をやっても報われることはない」と、何事にもやる気が持てないことが常態化している方もいます。
課題をやりこなせないという背景には、他にもまだまだいろんな事情があり得ます。繰り返しの注意や厳しい叱責が伝わらず、やるべきことができないとき、そのお子さんにどのような背景があるのかに目を向けて、指示の伝え方やモチベーションの持たせ方、サポート方法などを検討することが必要です。
【なないろキッズ】 #80 “できない”背景を考える
- 2023/01/17
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ