自信や生きる力に 発達特性ある子のデイサービス

自分で解決しやり遂げる力を

小さなヒノキの木片を、超高速で紙やすりをかけて形を整える小学6年生の航太朗君(12)。徐々に木目が浮き出て手触りが良くなってきた。削った木くずや焼きペンで焦げた香りが漂う中、車の形をしたキーホルダー作りに熱中した。
発達に特性のある子どもが過ごす放課後等デイサービス「個性が花咲くりょういくファミーユ」(松本市井川城2)の一室。昨年5月から土曜に開く、図画工作に特化したプログラムの一こまだ。会話をしながら生き生きと、そして真剣に制作に取り組む子どもの姿があった。
見栄えのいい作品の完成がゴールではない。材料や手順を自ら考え決める自由な創作活動を通じ、育むのは自信や生きる力。2、3月は市内で作品展を開く。

個性引き出し自己肯定感に

「個性が花咲くりょういくファミーユ」が開く、図工の特別プログラム。木片の面を取り、トラック形のキーホルダーを作った航太朗君は「だんだん表面が平らになるのが楽しかった。(木の感触に)自然を感じる」とうれしそうだ。余った時間は、スタッフの作品の穴開けを手伝ったり、木の板にドングリを挟んで割ったり。
部屋の一角には、子どもたちの作品がずらりと並ぶ。東京都庁がモチーフのオブジェ、ビデオテープやビデオデッキの形を段ボールで再現した作品は航太朗君の作だ。小学4年の女児が制作した張り子のキツネの面は、目を見張る本格的な出来栄え。街を好きな材料で作ったジオラマ風の作品など、発想力に驚かされる物ばかりだ。

2020年5月に開所した「ファミーユ」は、個別対応を基本に、発達に特性のある子どもたちの学習支援などに力を入れている。同時に、個性や表現力を引き出し自己肯定感を高めようと、アート活動ができる環境を整えている。
以前は、図工に興味のある利用者が、1時間の利用時間の中で、学習や学校の宿題の後の短時間で取り組む例が多かった。次第に関心を示す子が増え、「図工の時間がもっとあれば」と要望が出てきた。
これを受け、図工に特化した時間を昨年5月から土曜に開設。1回1時間で、3クラス開いている。施設内に設けた専用の部屋が会場。ハロウィーンやクリスマスといった月替わりのテーマを設けるが、使う素材や手順、サイズは自由だ。外部講師を招く回もある。

失敗を糧に前進 過程重視で自信

自分で考えやってみるプロセスを重視。スタッフは、見栄えの良い仕上がりや失敗防止のための先回りの助言はせず、危険な行為以外は否定もしない。失敗しても自分で選択したことなら受け入れられる。失敗を糧により良い物ができれば、自信になるからだ。
1クラスは定員4人で、スタッフは2人。他人との関わりが苦手な子もいる。どうしていいか分からないときはスタッフの手が空くまで待ったり、他の子に尋ねたり、困っている仲間に声をかけて助ける…。複数人で机を囲むことで、気づきやできることを増やしていくのも狙いだ。
プログラム主担当の支援員・大月美歩さんは「何かあった時に自分で解決してみよう、と思える心を育みたい」と話す。「作品は他人と比べるのでなく、完成が全てではない。そこまでたどり着いたことを自分自身で認めてほしい」
作品展「個性が花咲く展」は、今回の開催が3回目になる。小学生から高校生のファミーユ利用者十数人による約25作品を展示する。10~26日は松南地区公民館(芳野、火曜祝日休館)、3月10~26日は長野銀行大名町支店「ながぎんコミュニティープラザ」(大手2)。問い合わせはファミーユTEL0263・50・5122