イタリア人デザイナー改装 築350年の古民家情緒あふれる宿に

古きもの大切に新たな価値を

世界各国、さまざまな年代のアンティーク品が並ぶ森の中の宿泊施設「LA TERRA(ラ・テラ)」が昨年末、塩尻市洗馬上小曽部にオープンした。
築約350年の古民家を、アパレルブランドや店舗設計を手がけるイタリア人デザイナーのロシャン・シルバさん(46、東京都)が改装した。アンティークを取り入れた設計デザインが、国内外で支持されているシルバさん。「本棟造りの歴史的にも価値の高い建造物」と母屋の梁(はり)や柱は残し、床はローズウッドの板張りにした。
建物周辺にはグランピング棟やバラ園、サウナ、農場などを整え、五感で四季の移ろいを感じられる空間を提案する。「自然も古い道具も、手入れをしながら大切に残していきたい」という思いがある。

魅力的な年代物自然遊びも充実

北欧のデザイナーズチェア、400年前にインドの祭りで使われた木のオブジェ、京都の日本画-。日本家屋の雰囲気を残す宿泊施設「ラ・テラ」の建物内には、こだわって取り寄せたアンティーク品が各所に配置されている。
海外の船で使われた照明や、ルイ・ヴィトンの年代物のトランクケースなど、貴重な品は眺めるだけでも楽しい。露天風呂付き客室は2部屋あり、iPadで照明操作ができる最新のシステムを導入している。「古く良いものと、便利で快適な新しいものを融合させたい」というのがロシャン・シルバさんのおもてなしの心だ。
レストランでは山菜やジビエ料理、塩尻ワインを提供し、周辺にグランピングテントやフィンランド式サウナ、プール、有機農場などを備える。森の中で映画上映やキノコ採り、川遊びなど季節によってさまざまなアクティビティーが楽しめるという。

良いバラ栽培地探していたら…

イタリアで建築と経営を学び、テキスタイルメーカーを運営していたシルバさんは、15年ほど前に来日。鎌倉などで古民家をリノベーションしたアンティークカフェを複数手がけ、ヨーロッパの田舎暮らしのような空間を提案している。
長野県での事業展開は初めて。川の音や鳥のさえずりが聞こえ、星が見える小曽部の環境は「それだけで素晴らしい」とし、古い物や自然を壊さずに、新たな価値ある空間として大事に使っていきたいという思いがある。
古民家との出合いは偶然だった。自社の化粧品に使う香りのいいバラ「ダマスクローズ」の栽培地を探していると、インターネットで塩尻の古民家を見つけ、小曽部川のせせらぎが聞こえる自然豊かな環境が気に入り土地建物を購入した。
バラ園には現在2000本を植え、5000本の栽培を目指す。敷地内の蒸留所でローズオイルを製造するほか、食用にできる無農薬栽培なのでハーブティーやジャムとしても提供予定。5~7月の最盛期には建物がバラの香りに包まれそうだ。塩尻の中でも奥まったエリアだが、既に全国から宿泊客が訪れている。「バラの見頃には、地域の人にもぜひ眺めてもらいたい」
「ラ・テラ」はイタリア語で「浄土」の意味。「古き良きものを大切に、信州の自然の素晴らしさを伝えたい」とシルバさんは話す。
3月末まで、県内在住者は石窯(いしがま)焼きピザが1枚600円になる(ランチタイムのみ)。要予約。TEL0263・52・7000