【働くママ・パパ】「お菓子工房ペパン」店主 冨田琴美さん 家族後押し念願の菓子店

松本市県1のレストラン「マンマ・ミーア」内にある「お菓子工房ペパン」店主でチーフパティシエの冨田琴美さん(県)。小学2年生の弓月(ゆつき)君(8)と年中の杏(あん)ちゃん(5)を育てながら昨年3月、念願の店をオープンしました。

★きっかけはケーキ教室
冨田さんは神奈川県出身。青山学院大で英米文学を学び、就職活動中に食に興味が湧き、卒業後は調理と製菓を学べる専門学校へ。会社に就職してパティシエや広報の仕事に携わります。
結婚、出産を機に退職。夫婦で憧れていた松本に移住します。子育てをする中、縁があってイクトモのメンバーに仲間入り。取材活動の傍ら、マンマ・ミーアに頼まれケーキ作り教室を担当します。
そうした状況が続いたある日、マンマ・ミーア代表の増田龍美さんから「店の一角で独立してやってみないか」と誘われます。仕事の大変さを知っているだけに、「子どもが小さいうちはできない」と思った冨田さん。一方で「こんなチャンスはめったにない」とも。
悩んでいると夫が「やってみたら」と一言。背中を押され決断しました。
★「ペパン」オープン
店を始めるに当たり最も大事にしたのは、「自然の恵みを生かしたシンプルな素材を使う」「子どもたちに食べさせたいお菓子を作る」の二つです。
看板商品にしたのは米粉スフレサンド「ふわーじゅ」(300円~)。米粉を選んだのは、小麦粉のアレルギーがある子どもたちにも味わってほしいという願いからです。
生地に使う米粉、卵、牛乳は信州産、純生クリームは北海道産、砂糖やチョコレートはオーガニックなどを使用。挟むイチゴやリンゴ、カボチャなどの材料も地元産中心、添加物はできる限り使いません。
「今は栽培技術が進み大概のものは一年中手に入りますが、やっぱり旬の物が一番おいしい。安心できるものを選んで使っています」
作る品は決まったものの、米粉は小麦粉と勝手が違い、自分がイメージする生地はなかなか作れませんでした。試作を繰り返し、ようやく完成。「本当に苦労しました。気温や湿度によっても配合が変わるので、そのさじ加減が難しい。化学実験みたいですが、それが楽しくもあります」
★夢
学級閉鎖などで子どもを家で見なければいけないときは、マンマ・ミーアの理解で子連れ出勤させてもらう場合もあります。「自分が店にいなくても回る仕組みをつくっていますが、育児と両立できるのは職場の理解があってこそ。感謝しかありません」
ストレス解消法は、電子ピアノを消音(ヘッドホンモード)にして思い切り弾くこと。家族4人でサイクリングするのも良いリフレッシュになっています。
仕事に真摯(しんし)に向き合う冨田さんを見て、家族も変化しました。夫の順一郎さんは率先して子どもの迎えに行ったり、子どもたちも菓子の感想を話したり。「小さいなりに仕事の大切さは分かっているようです」
取材時にお客が訪れ、クリスマスに初めて小麦アレルギーの子どもとホールケーキを食べられたことを伝えました。「こういう声が一番うれしい。力が湧いてきます」と冨田さん。「ふわーじゅを信州スイーツの新定番として広めていきたい」と目を輝かせます。