
地域の善意が生きた教育に
「クラスで飼って増やしたメダカを、みんなに見てもらおう」。本紙昨年11月12日付で紹介した、松本市芳川小学校3年5組の「メダカ水族館」構想だ。総合学習の一環で取り組んできたが、メダカの数が急減。実現のためメダカを分けて-という児童たちの願いに、市内外から25件の申し出があり、30種類300匹の貴重なメダカが同校に贈られた。
善意の後押しを受け、実現したメダカ水族館。大小50もの水槽には、おなじみのメダカのほか、観賞用に品種改良されラメが入ったものや尾びれが長いものなど、希少種がずらりと並んだ。
1月30日から3日間、「水族館」として希望した13クラスに見学時間を設けたほか、休み時間にも広く開放。多くの子どもたちが、多様で奥深いメダカの世界に触れた。
「緑光」「マリアージュ」「夜桜」…。いずれもメダカの品種(通称)名だ。白、黒、赤など色もとりどり。ラメが光る種類など、1匹1000円以上するものもある。
1日、芳川小学校「メダカ水族館」会場となった多目的室。公開最終日の1~4時間目は、事前予約した他クラスの児童がひっきりなしに訪れた。約50用意したメダカの水槽を、興味深そうにのぞき込んでいく。主催した3年5組のメンバーは、案内や対応に追われた。お楽しみ企画として設けた輪投げやおみくじなどの遊びコーナー、写真ブースも大盛況だった。
実施に向けては、総合学習の時間を使い、2学期から14の班に分かれ、楽しんでもらえる企画をと準備。本紙に載ってメダカが寄せられ始めた昨秋の参観日には、クラスの保護者や教員にも公開した。手作りのメダカグッズを販売して餌代に充て、1人が1水槽を担当し、責任を持って世話を続けてきた。
水族館実行委員の田中結都(ゆいと)君(9)は「秋にクラスのメダカが死んだ時はどうしようかと思ったが、分けてもらって本当にうれしかったし、こんな珍しいメダカもいるんだと勉強になった」。自身もメダカを飼う松田真理校長も「地域の方の協力で、全校が楽しめる貴重な機会となった」と感謝する。
クラスでの総合学習としての取り組みは年度内で終了。愛着を持ったメダカは希望する児童らで持ち帰り、引き続き世話を続ける。メダカの寄贈者への報告とお礼を兼ねた手紙も書く予定だ。
担任の田内優貴子教諭は「メダカ水族館をやりきったという思いで、子どもたちも満足している。メダカについて深く知り、自分たちで考えて実践する力が付いた」。文字通り、生きた教育の機会となった。