【記者兼農家のUターンto農】#88 汚泥肥料(下)

知ることが活用につながる

1月下旬、日本大の学生3人が南安曇農業高校を訪れた。
その一人、生物資源科学部3年の曽山はるかさん(21)は、安曇野市出身で南農の卒業生。大学の仲間と、下水処理で出た汚泥の肥料利用について研究してきた。同じテーマに取り組んでいる後輩たちと成果を共有しようと、この日、母校に戻ってきた。
ただ、実は高校時代は汚泥の研究をしていない。ほかの2人、同学部4年の柴田大輝さん(22、山口県出身)、商学部4年の森田麻衣さん(22、埼玉県出身)は非農家出身だ。
汚泥を使った育成調査のほか、イメージについてアンケートしたのがユニークだ。対象が学生たちの身の回りなので、113人のうち20代が中心で、農業に関わりのない人が多いという偏りはある。逆に言えば、典型的な消費者側の視点を知る手掛かりになる。
結果を見ると、汚泥にネガティブなイメージを持っている人がほとんど、というのは当たり前だろう。
一方で、栽培に使うことに抵抗があるかと聞くと、「ない」と答えた人が半数近くというのは、意外だった。もちろん「ある」と答えた人も3割ほどいて、健康面への懸念が理由に挙がった。前提として、そもそも汚泥の堆肥を知らないという人が大多数だった。
前々回紹介したように、下水処理場「アクアピア安曇野」の汚泥の場合、有害物質は基準値以下だ。知識を広めることが、汚泥利用のポイントの一つになるということが、曽山さんたちの研究からくみ取れる。
教え子の報告を聞いた南農の今溝秀雄教諭は、「汚泥が肥料に使えると知れば、『変なものは流せない』という考えにつながるはず」と話した。安曇野に限らない考察だろう。汚泥で育てる食べ物で、肥料成分だけでなく、環境意識も循環する。