外国出身ママパパに聞く 日本の子育てとの違い

文化や習慣、社会的な仕組みの違いなどで、日本と海外では子育てに違いがあります。中信地区で暮らす外国出身の4人に、日頃感じていることを聞きました。


英国は創造性など育てる教育

長野県は子育てに最適な場所だと思います。イギリスと違う良いところは二つ。一つは安心して子育てができる地域のコミュニティーがあることです。
私の住んでいる地区は夏祭りや運動会、三九郎などの文化的な行事がたくさんあり、子どもたちは自分が関わっている、見守られているという感覚をより強く持つことができます。また、地域の見守りがあるからこそ、安心して子どもたちを外で遊ばせることができます。
二つ目は自然と気軽に触れ合えることです。目の前には美しい山々があり、ハイキングやスキー、川や湖で泳ぐなどさまざまな自然体験ができます。東京のような大都市でも、イギリスに比べると自然へのアクセスは比較的簡単だと思います。
ただし、教育システムは時代遅れだと感じます。日本ではテストの点数や正しい答えを出すことに重きが置かれ、子どもたちの創造性や物事を多角的に考えるための批判的思考力を育てることには関心が向けられていません。そうしたスキルを教えるのは、親の責任となってしまうところが残念です。

★エドガー・田中・ムーアさん(47、松本市、英国出身)。2007年に来日し、08年松本に移住。日本人の妻、小学6年の長女(12)と暮らす


台湾は家族が学校まで送迎

日本で子育てをして驚いたのは、小学校低学年の子どもたちが自分で登下校していることです。台湾では治安や交通事情もあり、中学年くらいまでは基本的に家の人が送迎します。子どもだけで近所や公園へ遊びに行ったり、自転車で公道を走ったりすることもありません。
台湾は日本以上の学歴社会で、公立私立に関係なく幼稚園や保育園での就学前教育は当たり前です。公立の小学校でもクラスや学年で成績の順位がつけられ、その順番でクラス分けがされます。
共働きの家庭が多いので塾兼用の学童クラブ「安親班」もたくさんあり、下校時間にはそれぞれの安親班の専用バスが、学校前にずらりと並んで子どもたちを待っています。また日本の給食センターに当たる施設はなく、給食は学校内で調理されます。
日本にはない習慣としては、小中学校でお昼寝タイムがあり、その時間は全員が机に伏せて昼寝をします。通学かばんは背負うタイプだけでなく、リュックの下に車輪が付いていて、キャリーバッグのように引きながら登下校しているのもおなじみの光景です。
また、ヤギ乳は牛乳よりも栄養が豊富といわれており、多くの家庭で子どもたちのために宅配サービスを利用しています。

★Y・Jさん(51、松本市、台湾出身)。16歳で来日。夫(54)はマレーシア出身、子どもは社会人の長男(24)、大学3年生の次男(22)、小学3年の三男(9)


韓国は学歴競争は日本以上

都会と地方でも違うと思いますが、韓国の学歴競争は日本以上に激しいです。幼稚園のうちから習い事のはしごは普通。塾では評判のいい先生のクラスを、前の席で受けるために代理人が並びます。休み時間はコンビニに走って食事を買い、送迎の時間は車が塾の周りに列を作ります。
就きたい仕事、そのために入るべき学校、取るべき資格や語学に向けて、早いうちから目標を定めて勉強するのが当たり前という雰囲気です。高校も夜中まで図書室を自習用に開放してくれます。
運動会や遠足など、イベントの時は先生にキンパ(のり巻き)を作って持っていく習慣があります。子どもの幼稚園の初めての遠足に持っていったら、「受け取れません」と大ごとになり驚きました。
日本の中学校の部活で疑問に思うのは、プロを目指すわけでもない普通の生徒が、朝練・夜練・土日の試合などに参加しなければいけない環境にあることです。スポーツを楽しみとして取り組める範囲を超えているような…。一番体が成長する時期で睡眠も食事も大事なのに、勉強する時間の確保が難しくなるほど打ち込むべきものか?と子どもを見ていて感じます。
子どもたちに、母が育ってきた国の文化にも親しんでほしいという思いはもちろんあります。親の体調と新型コロナで今は行き来できませんが、落ち着いたら家族で古里を訪れたいです。

★安香(アンヒャン)さん(49、安曇野市穂高、韓国出身)。2008年に来日し結婚。夫、中学1年の長女(13)、小学4年の長男(10)と暮らす


ロシアは自分で考え行動する

娘たちは日本で生まれ育っていますが、学校はルールがいっぱいという印象です。ルールは大切ですが、なぜあるのか、どうしてそうしなくてはいけないのかを考えずに、前例のまま同じことをしているのは大きなマイナスだと思います。
例えば小学校はランドセル、中学生になると通学かばんに制服、体操着まで指定されます。でもロシアでは、制服なら白いシャツにグレーのスカートなどおおまかな決まりがあるだけで、子どもたちはどこで何を買う、いくらで買うなどを自分で決められます。教室の掃除もやり方は決まってなく、その日の当番になった子どもたちが、どこをどうきれいにするかを自分たちで考えます。
また、教育システムの違いなので比べることはできませんが、ロシアでは学校は勉強する場所という考え方で、小学生から勉強やテストへのプレッシャーが非常に大きいです。そのためか「きちんと勉強しなくてはいけない」「自分の行動に責任を持たなくてはいけない」と考える子が大半です。
一方、日本の学校は子どもたちが居る場所で、机に向かう勉強以外にもみそ汁を作ったり小さな動物の世話をしたりと、さまざまな体験から多くのことを学んでいます。日本の子どもたちはより子どもらしく、ゆったりしていると感じます。

★スミレさん(45、松本市、ロシア出身)。2007年来日。日本人の夫(51)、中学1年の長女(13)、小学5年の次女(11)と暮らす