海外の大学で学びながら地域づくりに取り組む

ものを結びつけるパイプ役に

海外の大学でスポーツ科学を学び、日本では一般社団法人を発足させ、地域づくりに取り組む─。武田朋己(ともき)さん(20、安曇野市豊科)は、広いエリアで活動する。
4歳から水泳を始め、日本(古式)泳法の泳者だ。高校時代のオーストラリア留学をきっかけに、同国の大学への進学を決め、現在はメルボルンのディーキン大学でスポーツ科学を学ぶ。
コロナ禍でオンライン授業だった時期、地元でも何か活動がしたいと、友人と2人で一般社団法人「ミドルマン」を設立。地域づくりや若者が政治に関心を持てるようなイベントを企画する。
夢は、近代泳法と日本泳法、オーストラリアと日本、行政と地域─など、さまざまなものをつなげ、さらにそこから新しいジャンルをつくることだ。

日本泳法が得意 運動科学を学ぶ

子どもの頃から、家族でオーストラリアに旅行に行っていたという武田朋己さん。サンゴ礁や赤い砂漠、エアーズロックなどさまざまな場所を巡る中、日本と異なる文化や自然に驚き、「(日本との)ギャップにひかれた」。松本秀峰中等教育学校5年時に留学し、同国の大学へ進学したいという気持ちが固まった。
4歳から水泳を習い始め、日本泳法が得意になった。オーストラリアは水泳やラグビーの強豪国。「なぜ強いのか、どういう指導体制が組まれているのか、自分の目で見、勉強したいと思った」
大学のスポーツチームに関わりたいという気持ちもあり、選択肢は一択。日本の大学は受験せず、語学学校へ通ってさらに語学力を養うなど準備をし、昨年2月、メルボルンにあるディーキン大に入学した。専攻はスポーツ科学だ。
武士の時代から受け継がれる日本泳法と近代泳法とでは全く異なる気がするが、「両者を比較したり、組み合わせたりして新しいジャンルを生み出したい。互いに役立つことがあるのではないか」と武田さん。
入学はしたが、コロナ禍で渡豪できず、講義はオンラインで受けた。自由になる時間があることから、持ち前の行動力とフットワークの軽さを生かし、以前からやりたかった地域づくりに取り組むことにした。昨年4月、一般社団法人「ミドルマン」を設立。小学校時代からの友人で慶応大に通う丸山大河さん(20、東京都)が心強い相棒だ。

政治と若者などイベントを企画

選挙権が18歳以上に引き下げられたが、若者の選挙、政治への関心は低い。そんな状況を打破しようと参院選直前の昨年4、6月、候補者と高校生、大学生などとの対談を松本市内で企画した。候補者からの一方通行ではなく、「面と向かって直接話せたことは大きい」。半面、「何を話せばいいのか」といった声もあり、「次回はテーマを決めて開きたい」。
「今一番やりたいことは、日本泳法を世界に広めること」と武田さん。さらに「外の世界でさまざまなものを吸収し、持ち帰る意気込みで勉強している」。教育や政策など広域的な視点でスポーツと関わりたいという。
2月末にはオーストラリアに渡り、現地での大学生活がスタートする。休みを利用して日本に戻り、地域づくりの活動は続ける予定だ。政治と若者、地域や行政と住民、日本泳法と近代泳法、世界と日本─。「さまざまなものを結びつけるパイプ役になりたい」と願う。