
大切な行事 続けていきたい
子どもたちが神像に色をつけ、リヤカーで地区内を回りながらユニークなおはやし…。松本市島立永田地区で4、12日、道祖神の化粧と祭りが行われた。道祖神像が色塗りされる「化粧(彩色)道祖神」は、安曇野市などで見られるが、松本では永田と隣の町区などわずかだ。
道祖神の化粧は4日。前週に色を洗い落とした後、児童たちが新しく色を塗り、再び鮮やかな神像に。コロナ下でも昨年は春休みに行うなど、毎年途切れることがない。
児童がリヤカーを引き、太鼓をたたきながらはやして回る祭りは12日に実施。2021、22年は中止しており、通常の形で行ったのは3年ぶりだ。
関係者は「地区の大切な行事」(育成会)と位置付け、伝統をつなぐ。
児童が協力して部位ごとに彩色
「なかなか色がつかない」「最後は上の日の丸だよ」…。
松本市島立永田地区の中心部にある男女双体の道祖神。4日に行った化粧(色塗り)には、小学2~6年の8人が参加した。
水にぬれても落ちにくい顔料を使い、男性像の羽織や女性像の表(うわ)着(ぎ)は青、長袴(ながばかま)は紫など、部位ごとに色を変え塗っていった。
参加した最年長の二(に)茅大斗(かやたいと)君(12、島立小6年)は「みんなで一丸となってできて良かった。来年の見本になる」。妹の結音(ゆのん)さん(10、同4年)は「難しかったが、協力してできた。地区の人たちが仲良くなれる機会」と楽しそうだった。
独特のはやしでリヤカーを引く
道祖神の化粧に加え、他地域では聞かれないはやし言葉が、永田の道祖神祭りの特色だ。
「チャンチャンリース、チャンチャンリース、イーオー」
12日、参加した6人の児童・保育園児やその保護者らは、こうはやしながら、地区内の東西南北の道をリヤカーで練り歩いた。
当初は11日の予定だったが、10日の大雪の影響で1日遅れて実施。道祖神の周辺に児童や保護者が「奉納道祖神」と児童の名前、生年月日を書いたのぼりを立て、うどんなどの「長く太い」食べ物を供えた後、上級生がリヤカーを引いた。
リヤカーに乗って太鼓をたたくのは小学校入学前の子で、今年は下條源(はじめ)ちゃん(6)。コロナ禍で2年続いて祭りを中止していたため、2年生の佐野景梧君(8)も初めて太鼓をたたいた。
源ちゃんは「緊張したけど、うまくやれた。(小学校入学が)楽しみ」。景梧君は「最初は難しいと思ったが簡単だった」。
少子化傾向で子どもの行事を続けるのが難しい地区もある中、育成会長の佐野麻衣さん(33)は「コロナ禍でなかなかできなかった行事が、今年はできてよかった。今後も大切にし、続けていきたい」と話していた。
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永田の道祖神は高さ約1.5メートル。背面に「弘化二乙巳(きのとみ)(1845)年二月吉日」の銘があり、「帯代二十両」と刻まれている。
松本地方では江戸時代、他の村の道祖神を運んできて祭る「道祖神盗み」または「道祖神の嫁入り」の風習があった。盗む側は“嫁入り”のため「帯代」を払うとされている。
道祖神の化粧がいつから始まったかはっきりしない。縁結びの神とされ、かつては結婚適齢期の女性が化粧を施していたという。