料理人からサッカースクールコーチに 大塚よもぎさん

謙虚さと気遣い大将の教え胸に

松本市の日本料理店「満まる」(大手4)で板前修業をしている大塚よもぎさん(28、元町)が今春、サッカーJ2水戸ホーリーホックが運営するスクールの、U―13(=13歳以下)ゴールキーパー(GK)コーチに就く。およそ8年間、まい進してきた料理の道を離れ、子どもの頃からの夢をかなえようと決断した。

子どもの頃の大きな夢

大塚さんは東京都出身。小学2年生で始めたサッカーを中学、高校でも続け、満まるで働く今も、同市が拠点の社会人チームFCエンペサールでプレー。ポジションはGK一筋だ。
中学時代に所属したクラブチームのコーチで「サッカーの恩師」と慕う人から、「ホーリーホックのスクールを手伝わないか?」と最初に打診されたのは一昨年末。
この時は、一人前の料理人になる夢を追い、充実した毎日を送っていたため、すぐに断った。が、一方で心の奥底に眠っていた「サッカーに携わる仕事に就きたい」という、子どもの頃の大きな夢が呼び覚まされた。

1年間迷い出した答え

大塚さんは高校卒業後に2年間、自衛官として働き、20歳で料理人に転じ、23歳で満まるに入店。同店の大将・増田崇宏さん(41)の下で研さんを積み、「そろそろ自分の店を持つ挑戦をしてもいい」(増田さん)ところまで腕を上げていた。
料理人か、サッカースクールのコーチか―。1年間迷いに迷った末、大塚さんが出した答えは、サッカーに携わる職に就くことだった。「競技を始めて20年、ずっとプレーヤーだったが、その楽しさは何物にも代えられない。それを伝えることを仕事にしたい」
同じ飲食の仕事に携わる息子に、背中で生き方を見せてきたパン職人の両親や、修業する姿を見てきた満まるの常連客ら周囲は反対した。増田さんも「(料理人の8年間が)もったいない」と説得したが、大塚さんの意思は固かった。
「本人が決めたことだから仕方ない。これからは子どもに教える仕事。子どもは大人以上に人を見ている。サッカーを通じ、人として成長してほしい」と増田さん。大塚さんは「大将から謙虚さと、人への気遣いの大切さを学んだ」と感謝し、「コーチになっても必ず心がける」と誓う。
3月で店を辞め、4月から新天地へ。「今は不安もあるが、わくわくしている。これからはサッカー指導者の道を、自分で切り開いていく」。松本で世話になった人たちに、自身が選んだ道が間違いでなかったことを示す覚悟だ。