
事故で急逝の画家須澤元夫さんを悼む
自動車事故で16日に86歳で急逝した松本市の画家・須澤元夫さんは、画業一筋に歩み、多くの生徒を教え、その人柄を慕われた。双子の次男を17歳の時にオートバイの事故で、三男も昨夏に病気で亡くし、自身も2010年末に心臓病で倒れながら、九死に一生を得た。悲しみや痛みを紛らわし、乗り越えるかのように描き続けた。
「どの道も坂もきついが下りもつらい歩き続けるその道にきっと日のさす時がある」
額縁のタカハシ松本店(出川3)で23日から開催中の「須澤元夫の道お別れ展」。遺族が、故人を見送ってもらう場として遺作約80点を展示した会場には、大小の風景画や静物画などのほかに、須澤さんが絵に添えた言葉の自筆も並ぶ。
須澤さんは同市の安原町(北深志)の出身。8歳の時に父親を交通事故で亡くし、定時制高校に通いながら、土産物として額縁に入れて売る大量の風景画を描いたのが、画業の始まりだった。
独学で日本画や油彩画、墨絵などを習得。市内を中心に県内外で個展を数多く開き、作品を売った。離婚し、男手で育てた3人の息子のうち次男を亡くした後は、仏画も描くように。自宅や公民館など市内外で多くの教室を開いて、生計を立てた。しがらみや、人のまねをして描くのを嫌い、美術会などの団体や組織に所属せず、展覧会にも出品しなかった。
画家で市美術館友の会顧問の中村石浄(せきじょう)さん(85、岡田下岡田)は「自分の世界を追求し、ぶれなかった。最後まで自身の井戸を掘り続けた人」と語る。
須澤さんの6年来のファンという横川睦子さん(71、松原)は「優しさや心の広さが表れた絵に、いつも目を奪われた。今までありがとうございました」と故人をしのんだ。
「お別れ展」は28日午後4時まで。入場無料。